2010年、当時の管理者だった日本万国博覧会記念機構(2014年に解散)が昭和設計に依頼して耐震診断を実施したところ、建築基準法が求める数値を下回っていることが判明した。特に弱かったのが、腕部分と塔の上部だ。
2012年、特定行政庁である吹田市と昭和設計が改修内容について本格的に協議を開始。一般公開を視野に、法規上の整理から取り組んだ。
改修設計で要求されたのは、耐震補強を施して安全性を確保しつつ、外観や内観のイメージを極力変えないことだった。具体的には、塔内に人を入れて一般公開するには、「工作物」から「建築物」へと法規上の扱いを変更し、そのために現在の法規にも適合させなくてはならない。そこで浮上したのが階数の考え方と耐火性能に関する法解釈の問題だ。
太陽の塔はその独特な外観だけでなく、内部のあらゆる展示物や壁に掛けられたパネルまでもが一体となって1つの作品を構成している。腕部の鉄骨に耐火塗料を塗ることになれば、塔内の印象が変わってしまう。また非常用進入口を設けるために外壁に穴を追加で開けることも、印象が変わる上に耐震性が低くなるというデメリットがあった。