歴史と技術を感じる新たなランドマーク――東京都中央区「GINZA PLACE(銀座プレイス)」

2016-12-19

 

歴史と技術を感じる新たなランドマーク

――東京都中央区「GINZA PLACE(銀座プレイス)」

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東京・銀座の「顔」ともいえる銀座四丁目交差点に、新たな商業施設「GINZA PLACE」が誕生した。外観ファサードには、日本のクラフトマンシップを表現するために真っ白なアルミパネルが5000枚以上使用された。美しさだけでなく、最新技術も込められた注目の建物だ。
 
 銀座は東京を代表する商業地だ。大通りに沿ってデパートやブランドショップなどが軒を連ね、新しい流行の店ばかりでなく、細道に入れば古くから商売を営む店も多い。伝統や品格を重んじる街でもある。
 
 その中で、銀座を象徴する風景として銀座四丁目交差点が挙げられる。晴海通りと中央通りが交差し、角にはそれぞれ和光本館、銀座三越、三愛ドリームセンターが建つ。その一角に、新たな商業施設「GINZA PLACE」が平成28年(2016年)9月24日にオープンした。
 

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9月24日、銀座四丁目交差点に新しい商業施設「GINZA PLACE」がオープンした。写真左に写るのは、昭和5年(1930年)から営業し、日本を代表する百貨店「銀座三越」。右は昭和38年(1963年)に完成した「三愛ドリームセンター」がある(写真:日経アーキテクチュア)


 事業者はサッポロ不動産開発とつゞれ屋だ。白磁のような外観ファサードは、クラインダイサムアーキテクツ(KDa)がデザインし、設計と施工は大成建設が担当した。KDaは、イタリア出身のアストリッド・クライン氏と、イギリス出身のマーク・ダイサム氏が設立した設計事務所だ。
 

 GP2 交差点の向かいから撮影したGINZA PLACE。交差点に面する1階部分は、ガラスに囲まれた車のショールームを配置している。道行く人の視線が、中で展示されている車に自然と注がれる(写真:日経アーキテクチュア)

 建物は地下2階・地上11階建て、高さ約56mだ。地階には飲食店の「銀座ライオン GINZA PLACE店」、地上1、2階に日産自動車のショールーム「NISSAN CROSSING(ニッサン クロッシング)」、3階にはイベントスペースとしても使えるカフェが入っている。

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GINZA PLACEの地下1、2階に入っている「銀座ライオン GINZA PLACE店」。地下鉄から直結している(写真:日経アーキテクチュア)

 

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地上1、2階に上がると、日産自動車のショールーム「NISSAN CROSSING」が迎える。最先端テクノロジーを搭載したコンセプトカーや日産の歴史を彩ったヒストリーカーなど、普段あまり見られない車をそばで見ることができる(写真撮影:日経アーキテクチュア)

 

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3階に入っているのは、サッポロ不動産開発が直営するイベントスペース&カフェ「common ginza(コモンギンザ)」だ。今後、アート作品の展示やプロモーション・イベントなどを開催する予定。テラスからは銀座四丁目交差点を見下ろせる(写真提供:サッポロ不動産開発)

 
 4~6階には、ソニーのショールームがある。これまでソニーのショールームは、銀座の数寄屋橋交差点に面したソニービル(昭和41年・1966年竣工)に入っていた。ソニービルは2017年3月末に営業を終了し、2022年営業再開を目指して建て替えることが決まっている。

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4~6階は「ソニーショールーム/ソニーストア 銀座」と「ソニーイメージングギャラリー銀座」が続く。店舗内でソニー製品を触れる体験型の展示だ(写真提供:サッポロ不動産開発)

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7階と11階にはレストランがあり、写真は7階のビストロ「BISTRO MARX(ビストロ・マルクス)」。和光本館の時計の真正面に位置し、銀座の夜景を楽しめる。テラス席も利用可能だ(写真提供:サッポロ不動産開発)

 
 サッポロ不動産開発の生駒俊行(いこま・としゆき)社長は、「基準階の貸し床面積は130坪程度と、決して広くない。商品を大量に並べるような商業施設ではなく、商品を体験したり、人と交流したりすることを重視した施設を目指した。先端技術を集め、発信と交流の拠点として、モノに限らずコトの消費でも人々が集まる施設にしたい」と話した。同社は、年間約400万人の集客を想定している。


80年以上に及ぶサッポロと銀座の関係

 銀座は東京のなかでも象徴的な街であり、GINZA PLACEがその一等地にあることから、建物の背景についても紹介しておきたい。
 
 事業主のサッポログループにとって、銀座はゆかりの深い街の1つだった。昭和9年(1934年)にオープンした「ビヤホールライオン 銀座七丁目店」は、80年以上たった今もなお現存する最古のビヤホールとして、数多くのお客さんで賑わっている。
 

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昭和9年(1934年)開業当時の「ビヤホールライオン 銀座七丁目店」。1階のビヤホールは創建当時の姿のまま、現在も営業し続けている。柱は麦の穂、まん丸の照明はビールの泡をイメージしてつくられた。カウンター奥に飾られているのは日本初の250色ガラスモザイク壁画で、訪れた際にはぜひチェックしてほしい(写真提供:サッポロライオン)

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昭和45年(1970年)に銀座四丁目交差点に竣工した「サッポロ銀座ビル」。このときも地下で「銀座ライオン」を営業していた。この建物が建て替えられて、「GINZA PLACE」として生まれ変わった(写真提供:サッポロビール)


デザインに象徴性と調和の両立を求める

 サッポロ不動産開発はGINZA PLACEをつくるに当たり、「明日の銀座を創るランドマーク」を目指し、「銀座といえば白いGINZA PLACE」と言われるような象徴性をデザインに求めた。同時に、街との調和や連続性を重視し、建物内の店舗から街の店舗へのつながりにも配慮した。
 
 例えば、外から見たときに気付くのが、7階のテラスだ。銀座では、旧高さ制限(百尺ルール)が大正8年(1919年)に決められている。そのため四丁目交差点を中心に、昔からある銀座のほとんどの建物は百尺(約31メートル)に揃えられているのだ。GINZA PLACEの7階はその百尺に当たる。そこへテラスを配置することで、周りの建物のスカイラインとの調和を図った。

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和光本館の屋上から撮影したGINZA PLACE。百尺の部分に開口部がある(写真撮影:日経アーキテクチュア)

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7階のテラスから交差点を見渡せる。これまでには見られなかった銀座の新たなアングルだ。写真の向かいに写るのが和光本館。左手に三愛ドリームセンターと有楽町方面が広がる(写真撮影:日経アーキテクチュア)

 
 銀座には自治組織の「町会」や商店街組織の「通り会」など30以上の組織で構成される「全銀座会」がある。街並みの調和に関して、都内でも非常に厳しい目を持ったエリアだ。GINZA PLACEのデザインは、サッポロ不動産開発などと全銀座会で何度も話し合いを経たうえで決定されたと言う。
 
 建て替えに当たり、サッポロ不動産開発が掲げたデザインキーワードは「クラフトマンシップ」。伝統工芸の持つ美しさを現代的な表現に昇華するため、KDaはFretwork(透かし彫り)をモチーフに外観をデザインした。
 
 KDaは外観について次のようにコメントしている。「透かし彫りの入った白い器には、精緻な表面の艶の奥深くから、つくり手の思いや、手仕事から醸し出される温かさを感じる。そんな美しさがある。時代を注ぎ次の時代へとしっかり受け渡していく。透かし彫りの真っ白な器を両手で持ち上げたような、そんな強さと暖かさを持った建築を目指した」
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 GP12 GINZA PLACEの夜景。透かし彫りをイメージした外壁が美しくきらめく。開口部ごとに明るさと色をプログラム制御するフルカラーLED 410個を導入している。季節に合わせて照明の演出を変えている(写真提供:サッポロ不動産開発)

 
 全銀座会の岡本圭祐(おかもと・けいすけ)街づくり委員長は、「建物のガラスの見えがかりなど、ずいぶん手間やコストのかかる注文をさせてもらった。だが全て聞き入れてもらい、素晴らしいビルになった。外観では白磁の持つ奥ゆかしい艶が金属で再現され、さらに金属ならではのシャープなエッジを出すことで動きや流れも表現されている。新たな銀座のランドマークとなるだろう」と絶賛する。


上昇感生み出す5000枚のアルミパネル

 GINZA PLACEでは、大成建設が開発した新技術も導入されている。1つは、「T-Fダンパー」と呼ぶ制振ダンパーだ。その仕組みは、まず間柱(構造を支える柱ではなく、壁の下地となる柱)の中間部に鋼材プレートを使って摩擦材を挟み込む。そして地震発生時には、摩擦材が建物の揺れを軽減するというものだ。GINZA PLACEの1~7階で計28台が設置された。

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GINZA PLACEで初めて導入された制振ダンパーの仕組み。間柱の中間部に鋼材プレートで挟み込んだ摩擦材により、建物の揺れを低減する(資料提供:大成建設)

 

GP14 銀座四丁目交差点を空から撮影した。変形した敷地なので、さほど広い床面積がとれない。そのため売り場面積より、体験や交流などでサービスの充実を目指すこととした(写真提供:サッポロ不動産開発)

 
 もう1つの新技術が、外壁下地システムだ。従来の工法であれば、アルミパネルは構造躯体に直接固定したり、下地材に掛けたりすることが多い。しかし、GINZA PLACEでは上昇感を表す透かし彫りのデザインを追求したので、建物の高さによって異なる大きさのアルミパネルを外壁に取り付けなければならず、下地の配置などを調整することが困難だった。
 
 そこで、新たに開発したシステムでは、建物に取り付ける下地として溝のある部材を採用。方立て(窓などを支える垂直の補強材)に、溝を付けた特殊な無目材(水平の部材)を渡し、アルミパネルを取り付ける留め具が、その溝に沿ってスライドできるようにした。

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高さの異なるアルミパネルの固定を実現するために大成建設が考案した外壁下地システム。方立てに溝を付けた無目材を渡し、所々に設置した留め具によって、アルミパネルを1枚ずつ支えた(資料提供:大成建設)

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写真左にあるのが方立て。溝のある無目材を水平に渡し、アルミパネルの位置に合わせて留め具を取り付けた(写真提供:大成建設)

 
 留め具には下地部材に固定するものと可動するものとがある。地震や強風などで建物が揺れて変形した場合に、固定していない留め具が溝に沿ってスライドすることで、アルミパネルが追従する仕組みだ。大成建設による特許工法である。
 
 細部までこだわりが行き届いたGINZA PLACEは、銀座四丁目交差点にそびえる和光本館、銀座三越、三愛ドリームセンターに並び、“建築の銀座四天王”にふさわしい建物だといえよう。これから変わる銀座の象徴となりそうだ。
 
 
(執筆=日経アーキテクチュア 菅原由依子)
 
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