江戸時代を通じて順風満帆だった小津も、幕末の動乱に巻き込まれたことを示す史料がある。大商人であったがために、多大な軍資金の提供を要請されたのだ。小津が幕府軍へ提供した金額は15,000両を筆頭に数枚の受領書が展示されている。全て受領書を合計して現代の価値に換算すると、数十億円になるのでは、と。
一方で、小津は、幕府と対立する新政府軍にも相当な資金提供を行なっていた。将来どちらが政権をとっても生き残れるように、という知恵である。
その後、幕府が倒れ、明治新政府が誕生すると、小津は新政府によって、新しい商業機構である商法會所(かいしょ)の頭取などの名誉職に任命された。幕末の柔軟な両面外交が成功したことを示している。