「まるで大相撲」 迫力満点の宇和島闘牛

2019-05-16

 

「まるで大相撲」 迫力満点の宇和島闘牛

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闘牛と聞くと、スペインなどで行われている闘牛士が赤い布を牛の前でひらひらさせ興奮を煽り闘う姿が目に浮かぶことだろう。あまり知られていないが、日本でも外国のスタイルとは異なるが昔から各地域で闘牛が行われている。日本の闘牛は牛と牛が角を突き合わせて行うもので、「牛突(うしつ)き」、「牛相撲(うしずもう)」と呼ばれている。ルールは各地域によって若干異なるが、格闘時間は無制限で勝敗は戦意を失い逃げ出した方が負けとなる。試合には、牛を操って勝利に導く「勢子(せこ)」と呼ばれる介助人もいる。今回、平成31年4月7日に開催された春場所「宇和島定期闘牛大会」の様子や、勢子の役割、闘牛の日常などを探るため愛媛県西南部にある宇和島市を訪れた。

宇和島市営闘牛場

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昔から娯楽として親しまれている突き合い(闘牛)​​
 宇和島を含む南予(なんよ)地方の闘牛の起源は鎌倉時代(1185~1333年)に、当時農耕用の牛が自然に角と角を突き合わせているのを見た農民がそれを娯楽にしていたとの説や、17世紀後半に宇和海を漂流していたオランダ船を地元の漁民が救助し、そのお礼に贈られた2頭の牛がたまたま格闘していたことにより始まったとも言われている。享和(きょうわ)年代(1801~04年)に土俵を設けた本格的な闘牛が行われていたと古文書に記されている。
 今は年に5回定期闘牛大会が開催され市民の娯楽としても定着している。これから4月7日に開催された春場所「宇和島定期闘牛大会」の様子を紹介する。闘牛場は、JR宇和島駅よりバス(無料送迎)で5分ほどの小高い山の上にあるドーム型の立派な建物だ。ドーム内に入ると、真中に直径20mの土俵があり、その外側に約1,600人を収容できる階段式の観客席となっている。家族連れが多いことからも地域住民に親しまれていることが伺える。
 オープニングでは、元気な女子高校生たちで結成されている「大洲(おおず)よさこい羅り瑠れ櫓連(らりるれろれん)」の躍動的な踊りが披露され大会に華を添えていた。

宇和島市営闘牛場の外観 大洲よさこい羅り瑠れ櫓連の踊り


闘牛の闘志に圧倒される​​
 闘牛にも大相撲と同じように、前頭から横綱までの番付がある。闘牛の取組みでは東の前頭は西の前頭、東の大関は西の大関と同じ格付けで闘う。格付の高い闘牛は大相撲さながら化粧廻しを付けている。
 東と西の待機場から出て来た牛は、ブォーと雄叫びを上げながら牛主(うしぬし)に曳かれて入場。すると観客席からは歓声が湧き起こる。土俵に入場すると牛は、地面に体を擦り付けにおいを付けて自分の縄張りであることを示したり、前足で地面を引っかいて相手を威嚇している。興奮状態の牛は既に戦闘モード全開である。
 お互いの角を突き合わせた瞬間が闘いの開始となる。カン、カンと角がぶつかり合う音が場内に響き渡る。闘いを仕切る「勢子」の「行けー」の掛け声や、子供たちの「頑張れー」の声援が場内にこだまする。まるで大相撲のような盛り上がりだ。

地面に体を擦りつけ匂いをつけて縄張りを示す お互いの角を突き合わせ闘い開始

 
闘いにも思いやりの心を忘れない宇和島市民​​
 大会には進行兼実況アナウンサー役がいて闘いを盛り上げている。毎回マイクを握るのは、宇和島市観光物産協会闘牛担当職員で、宇和島市における闘牛研究の第一人者でもある坂本健二さん。宇和島闘牛のルールや決まり技などを初めて見る人にも分かりやすく解説してくれる。
 土俵の中で力いっぱい押し合う基本手の「押し」や、取組中、相手の隙を見て横から首、前足の付け根を攻める「ヒラ」など、宇和島闘牛には10種類の基本技がある。
 今、目の前で決まった技は、土俵の中で一気に相手を柵に押し込む「寄り込み」。ここで一方の牛は戦意を喪失し負けとなった。
 宇和島闘牛では、両方の牛にファイトマネーとして「給金(きゅきん)」が支給される。ユニークなのは、負けた牛に給金が多く支払われることで、勝牛4割、負牛6割と決まっている。これは負けた牛主に対する心遣いであり、牛も心身共に傷を負っているのでお見舞金の意味も含んでいるようだ。宇和島ならではのうるわしき伝統とのことである。

進行兼実況アナウンサー役の坂本健二さん 一気に相手を柵に押し込む決まり技の「寄り込み」

 
危険と隣り合わせの勢子​​
 宇和島闘牛の闘いでは原則、牛1頭に勢子1人が介助し試合を行う。危険が伴い体力と集中力も必要なので、勢子は何回も交代して闘いを操る。勝敗にも影響を与える大変重要な役割を担っている。今大会には19名の勢子が参加していた。
 「現在、宇和島には20名の勢子がいるけど、成り手が少なく年々減ってきている」と話してくれたのは、牛主の弟であり勢子歴30年の三曳(みつびき)正志さん。「牛に足を踏まれ足の指3本骨折をしたことがあります」。一歩間違えると大けがにもつながる勢子になった動機と醍醐味(だいごみ)を聞いてみた。「幼い時から牛が家にいる環境で育ったので、自然とそうなりました」、「醍醐味は、自分の導きによってその闘牛が勝利した瞬間ですかね」と言いながら微笑む三曳さん。その目には勢子の誇りと牛に対する愛情が溢れていた。

勢子歴30年の三曳正志さん 激しい闘いをコントロールする勢子

 
​​普段は平穏で規則正しい1日を送る闘牛​​
 普段、闘牛はどんな日常を送っているのだろうか。闘牛大会の翌日、宇和島観光闘牛協会長で牛主でもある山中均(やまなかひとし)さんの牛舎を訪ねてみた。
 闘牛たちは、昨日激闘があったことなどを全く感じさせず元気で、屋外で横長の竹の棒に鼻先を綱でつながれて長閑(のどか)にたたずんでいた。繋がれている時間は午前9時から午後3時までと約6時間。こうして立っていることで足腰が鍛えられるのだ。これも闘牛たちの日課で運動の1つでもある。

山中均さん 闘いの翌日の闘牛たち

 清掃が行き届いているきれいな牛舎では、1日2回、午前7時頃と午後3時半頃に干し草や麦、トウモロコシなどの餌が与えられる。時々お茶やビールを飲ませたり、大会が近付くとニンニクも食べさせるそうだ。牛の体調を見ては栄養剤を与えるなど体調・栄養管理には大変気を使っている。

闘牛が休む牛舎 餌、左から干草、麦

 
​​大地を利用したユニークな訓練​​
 大会に向けて闘牛も大相撲の力士と同じ様に、首・肩・足・腰を鍛える必要がある。大会の約1ヵ月半前から本格的な訓練を開始する。裏山に自然を利用した稽古場があって、そこには山の斜面を削り垂直になった土の断面の壁が広がっている。闘牛は、その土の壁にぶつかったり、穴掘りをして全身を鍛えている。また、牛舎の前に置いてあるタイヤを戦う相手に見立て角で突き上げたりもしている。ちなみに、強い闘牛の特徴は背が低く足が短い牛だそうだ。

山の斜面を突き全身を鍛える 訓練時に使用するタイヤ

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牛主は闘牛を手塩に掛けて育てている​​
 取材の終わりに、山中さんに宇和島闘牛の今後の展望を聞いてみると、「宇和島の伝統文化でもある宇和島闘牛を継承していくためにも、牛主と闘牛をもっと増やしてく必要があります」、「闘牛を育成するのには、手間と経費がかかります。安定した運営を図る一つの手段として、オーナー制をうまく活用できればと思っています」と熱い思いを語った。
 今回出会った闘牛関係の人たちは、牛に対する愛情が物すごく、特に牛主はまるで我が子を育てているようであった。牛主と闘牛たちとの間には、お互いにしか分からない信頼関係のようなものを感じた。

日中は屋外で過ごす 丁寧にブラッシングをする山中さん

 

お問い合わせ
「宇和島市観光物産協会」

http://www.uwajima.org/event/index3.html

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