顧客一人一人の好みに合わせてフルオーダーで足袋を作る大野屋總本店には、大量の型紙が保存されていた。誰もが知る有名人の型紙も数多い。オシャレな人達はそれぞれ足袋にこだわりがあるようで、1人で複数の型を持つ顧客も多い。座っている時間が長い場合はゆったりめ。15分間の舞踏用には、美しく見えることを最重点に、キツめのピッタリサイズ、など、用途やシーンによって使い分けている。「履き心地」と「見栄え」のバランスも重要。大野屋總本店のオリジナルである「新富型」の足袋は、足底部分の幅を狭く、足底の上にある足を包み込むように作ってあるため、立ち上がった時にスッキリ見えるのが、オシャレな顧客に人気が高い。
福島氏に、足袋を履いたときに美しく見えるポイントは?と伺うと、つま先がピッタリ合っていること、とのこと。つま先は、正面から見たときに着物の下から出る、一番目立つ場所。職人にとっても、つま先を縫うのは難しく、高い技術を要する。
また、大野屋總本店ではほとんどの足袋を綿を中心とした天然素材100%で作っている。その理由は、ポリエステルなどの化学繊維だと、履いている際に静電気が起きて着物のスソに汚れが着いてしまう可能性があるから。メインの着物を美しく保つことも、足袋の大切な役割のひとつなのである。