もともと「大漁祝い」のことを萬祝と言ったんですけど、それが次第に桁外れの大漁のとき、船主が漁師さんにお祝いの品として配った着物のことをさすようになりました。着物と言っても配られたのは反物で、それを漁師さんの奥さんたちが長着(ながぎ)や半纏(はんてん)に仕立て、お祝いのときに祝着としてみんなそろって着ていました。
萬祝発祥の地は、千葉県房総半島と考えられていて、青森から静岡までの太平洋沿岸に広く普及していきました。文献によると、1800年ごろにはすでに萬祝の着物を作る風習があったそうですが、昭和30年代には大漁のときに萬祝を配ることも着ることもなくなり、時代とともにお祝いとして配られる品は、ジャンパーなど実用品や現金支給(ボーナス)へと変わっていきました。