Caféインタビュー『温泉になりたい』                   温泉エッセイスト山崎まゆみさん

2014-07-10


Caféインタビュー

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山崎まゆみさん

 

温泉エッセイスト 山崎まゆみさん

今回はノンフィクションライターで温泉エッセイストとして活躍されている山崎まゆみさんにお話を伺いました。山崎さんは日本の温泉文化を海外に発信する取組みにより、国土交通大臣よりVISIT JAPAN大使として任命され、国内外で温泉文化の普及と「裸の交流」の輪を広げる活動をされています。

 

温泉エッセイストとして活躍されていますが、温泉に興味を持ったきっかけは何ですか?

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新潟県 蓮華温泉

 フリーライターになって1年目の1997年に、小学館のアウトドア雑誌『BE-PAL』の企画で、「混浴美女秘湯めぐり」という連載のお仕事を頂いたのがきっかけでした。書くのが仕事なはずなんですが、温泉に入って写真も撮る(!)って。実はそのとき父親に「お風呂に入って写真に撮られる仕事が来たんだけどどうだろう?」(笑)って聞いたんです。そしたら「減るもんじゃなし、自分が本当にやりたいことならやったらいい、やるべきだ。」と言われて「それもそうだ」(笑)と始めました。

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新潟県 栃尾又温泉

 

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子持杉

 

 実は両親が子供に恵まれないことを心配して、「子宝の湯」として有名だった新潟県魚沼市の栃尾又(とちおまた)温泉に通い、私を授かったと子供のころから聞いていたんです。36度から38度くらいの低温のラジウム泉でじっくり体を温めて基礎代謝と免疫力を上げることができて、その上宿の隣の薬師堂に参拝し、「子持杉」を跨ぐと子宝に恵まれる。母はそれを繰り返して私が生まれたらしいんです。これも何かの縁かな、と思って温泉レポートを始めて、すっかりはまってしまいました。


海外も含め各地の温泉を巡られていますが、今までに何カ所くらい体験されましたか?

 海外31カ国の温泉地も含め全部で1,000カ所以上は行きました。でも日本には3,000以上の温泉地がありますから、まだまだこれからです。
 

31カ国の温泉に行かれて、面白い体験があれば聞かせください?

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アイスランド 混浴風呂「ブルーラグーン」

 日本との違いでよく言われるのは、水着を着て入ることや日本より飲泉の習慣が多いことです。イスラム教の国では水着ではなく、ほとんど洋服を着たまま入るとか。ただ面白いのは、温泉に水着で入るハンガリーやドイツ、スイスなどでもサウナは別で、男女ともに真っ裸でタオルで隠すこともない。だからサウナにある風呂は裸で入るんですよね。日本では裸で入っても一部を隠す習慣がありますから、少しは隠した方が良いのではないかと思ったりして(笑)。

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バリ島 日本人が作った温泉

 戦争中に日本軍がいたところでは、兵隊さんたちが温泉を作って入っていたんです。その温泉に日本中の温泉地の名前を付けたりしている。例えばラバウルに宇奈月温泉があるんです。それぞれの土地の人たちは「何で臭くて熱いお湯に入るんだ」って最初不思議だったようですけど、その内に自分たちも入って気持ちが良いことが分かり、その土地に温泉が根付いた場所も多いんです。

 

 

 

外国の方には日本の温泉のどういうところを見て、楽しんでもらえば良いと思いますか?

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スペインからのお客様(旅館「龍言」)

 温泉だけでなく、旅館の中にある日本の文化とともに楽しんでもらいたいですね。共同風呂が恥ずかしければ、まずは貸切風呂からでも良いと思うんです。あまり無理して最初から長湯をすると湯当たりしたりするので、そのあたりは日本人の側から注意してあげなければいけないと思います。温度と同じように、泉質の違いでも入り方が異なります。
 ある温泉でオーストラリアの女性と出会いました。その人は湯船に入りながら天井などを眺めて、お風呂場の雰囲気なども含めスピリチュアルなものを感じた、と言っていました。この方のように、旅館の中で体験できる文化や日本人の精神的なものを感じて楽しんでいただくと嬉しいですね。

 

6月に発売した新刊本『お風呂と脳のいい話』では、脳科学者の茂木健一郎さんと対談をしています。対談で面白かったお話しを少し教えてもらえますか?

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 この本は温泉地を旅しながら茂木先生に私が質問して、温泉の効果などを脳科学者らしく分析していただく対談集です。ざっくばらんに楽しくお話しいただきました。 茂木先生は温泉に浸かっているときの安心感を胎児が母親の胎内にいる状態に例えたり、露天風呂の高揚感をファーストキスの時にドーパミンが出ることに例えて説明されたり、女性は五感で良い遺伝子を探し当てる(笑)とか。とても分かりやすく話していただいて、私も「そういえば相性の合う相手は臭いで嗅ぎ分けるな」なんて思ったりして(笑)。 男性が温泉を楽しむのは「後のビールが美味しいから」なんて茂木先生はおっしゃっていました(笑)。女性は健康・美容・美味しい食事などいろいろ楽しむ。混浴だって湯浴み着(ゆあみぎ)がある(笑)。でも先生は温泉のリラックス感が脳をメンテナンスモードに変え、バランスを取り戻すための別の意味での活性化が起こるっておっしゃるんです。だから湯川秀樹はお風呂の中で中間子理論を予想したって。そういう意味ではあれこれ考えずに温泉に浸かっているだけで、温泉はどんな人をも心身ともに和らげてくれるのですね、きっと。

 

温泉には関係ありませんが、7月には『白菊-shiragiku-伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花』という花火師の評伝を出版されます。

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ワイドスターマイン

 温泉と関係なくもないんです。先ほども言いましたが、世界の温泉を回っていると日本人が作ったものが残っている。それを作った兵隊さんも現地の長老もその当時のことを鮮明に覚えているので、そういう人たちの評伝をいつか書いてみたいと思っていました。
 嘉瀬さんは父の友人で、私も小さいころから知っていた長岡を代表する花火師です。長岡まつり大花火大会で戦後初めて名物の三尺玉を打ち上げたり、ナイアガラ瀑布やミラクルスターマインなどの長岡の名物花火を生み出した方です。その嘉瀬さんも戦争中は出兵し、戦後シベリアに抑留されて帰国した体験があるんです。平成2年には、ハバロフスクで亡くなった戦友に手向けるために、「白菊」という花火をシベリアで打ち上げました。また放浪の天才画家山下清が長岡で嘉瀬さんの花火に触発されて「長岡花火」と題した貼絵を発表しました。

 

最後に山崎さんが今最も気に入っている温泉と今後の活動や抱負について聞かせてください。

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大分県 壁湯温泉

 温泉巡りを始めたころは臭いが強く色の濃い温泉に快感を覚えていました。でも17年間温泉に入り続けて、今では、わかりやすく言えば無色透明の柔らかい温泉が心地よいと思うようになっている。例えば私の両親が通った新潟県の栃尾又温泉は38度くらいで無色のラジウム泉、同じように大分県の壁湯(かべゆ)温泉や群馬県の法師(ほうし)温泉なども無色透明で湯あたりしにくい温泉です。

 

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群馬県 法師温泉

 これらの温泉は源泉の温度が適温で、源泉から湯船に直接引いて掛け流しているので、温泉の鮮度が高い。温泉も源泉から近く新鮮であることが大切で、その上温度も38~40度程度でゆっくり入れる温泉が最近の私の好みです。そういう温泉は歴史が古くロケーションも良い宿が多く、その上昔からの湯治場なので混浴が多いんです。私が混浴をお勧めする1つの理由はここにあるんです。

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 こういう混浴のお風呂に長い時間浸かって、男も女もなく、職業も地位も忘れて周りの方と話をすると、人と人の間の「気持ちが良い距離感」が保てるようになるんですよね。毎日毎日こういう温泉に入っているおじいさんたちにお会いすると、皆まるで仙人のようなんです。
 だから私の将来の抱負は、温泉に入り続けてこのおじいさんたちのように、仙人になれたら良いなと思うんです(笑)。温泉そのものになってしまうような。


今回のゲストは、将来の仙人(笑)山﨑まゆみさんでした。山崎さんにはこれから1年間にわたって季節ごとの温泉の楽しみ方や、外国人観光客に温泉の良さを理解してもらうためのヒントなどを紹介するエッセイを書いていただきます。ご期待ください。

 

≪山崎まゆみさん プロフィール≫

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新潟県長岡市出身。ノンフィクションライター・温泉エッセイスト。
新聞、雑誌、TV、ラジオなどで温泉の魅力を紹介。著書に『だから混浴はやめられない』(新潮新書、2008年)、『ラバウル温泉遊撃隊』(新潮社、2009年)、『恋に効く!パワースポット温泉』(文藝春秋、2010年)、『お風呂と脳のいい話』(東京書籍、2014年6月)、『白菊-shiragiku-伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花』(小学館、2014年7月)など多数。2008年国土交通省「VISIT JAPAN大使」に任命。武雄温泉大使、にいがた観光特使、越後長岡応援団、日本旅行作家協会会員。

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