昭和レトロ「尾道」&気分爽快「しまなみ海道」

今回訪れたのは、古き良き昭和の暮らしが息づいている商都「尾道」とその尾道(本州)と今治(四国)を結ぶ全長約60キロの風光明媚な瀬戸内海を横断する「しまなみ海道」。 尾道市は今年4月に文化庁より「日本遺産」に認定された。また、6月に観光庁が海外への売り込みなどを支援する「広域観光周遊ルート」の1つに「せとうち・海の道」が選ばれ、しまなみ海道も含まれている。これからますます人気が高まると見込まれる尾道としまなみ海道を紹介する。

商都尾道を歩く

千光寺山ロープウェイから尾道水道を望む

千光寺公園わくわく散策

 尾道は、鎌倉時代より物資の中継地点として繁栄してきた商港街だ。
千光寺山ロープウェイで山頂の「千光寺公園」に上がると街を一望できる展望台に出た。海岸に沿って広がる古い街並みには今でも創業100年を超える老舗が点在し、その対岸の造船所では昭和初期から活躍している大きなクレーンが上下に動いている。

千光寺(806年開基)

天寧寺(てんねいじ)境内にある三重塔

 公園の一角にある尾道のシンボル「千光寺」にはたくさんの参拝者が願い事をしたり、お守り等を購入していた。石畳を下って行くと、猫の細道という小道につながる、名前のとおり猫に出会う。路地裏の多い東京の谷中地区にもたくさんの猫がいるが、緑がありこういうのんびりしたところは、猫にとっても居心地のよいワンダーランドなのであろう。

猫の細道

昭和の香り漂う「尾道本通り商店街」

 猫とお別れして次に向かったのは、古き良き昭和の風景と暮らしが今も息づく尾道本通り商店街。1.6㎞の長いアーケド街には、民芸店、飲食店、衣料雑貨、医院、銀行等があり、地元住民にも観光客にも便利で楽しい通りとなっている。

尾道本通り商店街入口

尾道本通り商店街の路地

 地元の人はもちろん、県外にもたくさんのファンを持つのが、創業100年を超える蒲鉾の老舗「桂馬蒲鉾商店」。瀬戸内海産の新鮮な魚を使用し、添加物や保存料は使っていないので体にも優しい。試食もできるのでぜひご賞味あれ。文豪・志賀直哉にも愛されたその伝統の味は今も変わることなく受け継がれている。

桂馬蒲鉾商店(1912年創業)

バラエティーに富んだ蒲鉾

 桂馬を出た目の前にあるのが昭和の香りが漂う喫茶店の「メキシコ」だ。「この地でもう60年以上営業しているわよ」と、微笑んでコーヒーを淹れてくれたのがママさんの川尻輝子さん。「昔は高校生が学校の帰りたくさん来てはワイワイガヤガヤ楽しそうにしていたわ。今は子どもが少なくなっちゃたから全然来なくなったけどね。その代わりに外国人観光客がちらほら来るようになってるわ。私、今年の1月からまだ1回もお店を休んでないの。疲れなんか全然感じない。元気だけが取り柄なのよ」。ママさんの健康の秘訣は。「健康でいられるのは、毎日自家焙煎のコーヒーを5杯は飲んでいるからよ!」。美味しいコーヒーとママさんとの楽しい会話に、心癒されるひと時であった。

桂馬蒲鉾商店(1912年創業)

バラエティーに富んだ蒲鉾

 商店街の中でも重厚さが際立つのが1919年創業の「山崎清春商店」。日本刀等の美術刀剣と日常で使う刃物工具の両方を扱う日本では稀なお店である。特筆すべきは徳川本家や島津家等から拝領した刀を所蔵していることだ。「外国人にはバックルが鍔(つば)のベルトと鍔付きのキーホルダーがよく売れてますよ!」とは四代目の山崎清光さん。マニアにはたまらない名店なのである。

美術刀剣と刃物工具の老舗 山崎清春商店

鍔付きベルトとキーホルダー

 あ、こんな商店街のど真ん中に銭湯があると思ったが、中を覗くとカフェスペースと尾道等の特産品を売るお土産物コーナー。ここは約100年間営業していた銭湯の「大和湯」をリノベーションしたレトロな雰囲気のお店「ゆーゆー」。記者がカフェで注文したのは、地元のレモンとはちみつをブレンドした「はちみつレモンジュース」。乾いた喉にレモンの酸味とはちみつの甘さが爽快感を与えてくれた。尾道には、懐かしい昭和の面影が今も残っていた。

ゆーゆー(大和湯)

自家製のはちみつレモンジュース

しまなみ海道

シトラスパーク瀬戸田付近から瀬戸内海を望む

外国人にも大人気「しまなみ海道」

 天気のいい朝だった。向かったのは、「しまなみ海道」の本州側の起点にある「尾道港レンタサイクルターミナル」。シティサイクル(俗称ママチャリ)やクロスバイク(サイクリングに慣れている人向け)など100台の中から自分の体に合った自転車を選べる。外国人もたくさん来るので英語表記の案内板も掲示されている。

http://ihcsacafe.ihcsa.or.jp/wp-content/uploads/2015/07/onomichi1.jpg

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尾道港のレンタサイクル乗り場

 これからサイクリングに出掛けようとしていたスペイン人と日本人のカップルに今回の旅行について話を聞いた。「2週間の休みを取って日本観光に来ました。美しいしまなみ海道の島々を見ることを楽しみにしています。その後は、愛媛県の松山城と道後温泉、更には松山からフェリーで広島県に渡り宮島そして京都にも行く予定です」と、スペインで会社員をしているというラファエル・ヒトス(Mr. Rafael Hitos)さん。「しまなみ海道は2日間かけて回るんですけど、今晩泊まる場所も決めてないので、どうなるかとちょっと心配なんです」と、困った様子で話してくれたのが島影容子さん。しかしその顔には、これから始まろうとしているしまなみ海道の旅に不安と期待が入り混じりながらも、笑顔が覗いていた。
あれも見たいこれも見たいという欲張りな記者は、時間の制約もあることから自転車で回ることを諦め、レンタカーでしまなみ海道を縦断することにした。

レンタサイクルの英語案内板

ラファエル・ヒトスさんと島影容子さん

恐るべき村上水軍

 これから向かう瀬戸内海の島々には、朝鮮や中国、東南アジアにその名を轟かせた海賊がいたという。村上水軍と呼ばれるその海賊は、南北朝時代から室町、戦国時代にかけて活躍した村上一族で、俗にいう三島村上氏と呼ばれた三兄弟のこと。長男の義顕(よしあき)が能島(のしま)、二男の顕忠(あきただ)が来島(くるしま)、三男の顕長(あきなが)が因島(いんのしま)をそれぞれに支配した。
最初に訪れたのは、因島にある全国でも珍しい水軍にまつわる資料館の「因島水軍城」。村上水軍にゆかりのある品々が展示されている。村上水軍は瀬戸内海の海上交通を掌握し、国内の軍事・政治にも影響を与えていた。城の眼下には因島の村上氏一族とその家臣が眠ると伝えられている金蓮寺(こんれんじ)の墓石群が広がる。栄枯盛衰を感じられずにはいられない。

因島水軍城

金蓮寺の墓石群

世界のかんきつ類に出会える

 尾道市は全国有数のかんきつ類(シトラス)の産地。尾道商店街のゆーゆーで飲んだはちみつレモンジュースは確かに美味しかった。生口島(いくちじま)の「シトラスパーク瀬戸田(せとだ)」に立ち寄った。施設では世界のかんきつ類約500品種が展示されている。「かんきつ展示室」には、いろんな種類のレモンやミカンが色鮮やかに実をつけている。また、「香りの館」では、四季を通じた香りが楽しめる。

シトラスパーク瀬戸田

かんきつ展示室内のレモン

日本最強の海賊にロマンを感じて

 水軍についてもっと知りたくなったので、大島(おおしま)にある「今治市村上水軍博物館」を訪ねた。江戸時代の海賊の暮らしや武器・船道具の紹介、能島村上水軍に関する古文書や陣羽織などが展示されている。
相手の船に引っかけて引き寄せる「くまで」(柄の長い棒の先に引っかけ板が付いたもの)や敵の服に絡めて動けなくさせる「そでがらみ」(柄の長い棒の先に刃金が付いたもの)、「虎蹲砲(こそんほう)」と呼ばれている小型の大砲など、海上の関所を無視して通行する船がいた場合の海戦に使用した武器や道具が面白い。

海賊が使用した船の模型や道具

能島村上家の陣羽織

戦で使う 左「くまで」 右「そでがらみ」

 それにしても戦が起きるこの辺りの海域は潮の流れが速い難所のはずだが、どのように戦ったのか。その疑問に答えてくれたのが村上水軍の次の言葉だ、「船に乗るより潮に乗れ!」潮目を読めということだ。なんと格好良い言葉なんだろう。
ロマンを感じながら走るしまなみ海道は、感動に満ち溢れていた。

「虎蹲砲」と呼ばれている豆大砲

今治市村上水軍博物館全景

取材協力・写真提供
今治市村上水軍博物館
http://www.city.imabari.ehime.jp/bunka/suigun/

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