街も客室も気軽に楽しめる新しいホテル 星野リゾート「OMO5 東京大塚」

2018-06-18

 

街も客室も気軽に楽しめる新しい都市型観光ホテル

星野リゾート「OMO5 東京大塚」

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2018年5月9日、東京・大塚の駅前に星野リゾートの新ブランド「OMO5(おもふぁいぶ) 東京大塚」がオープンした。OMOはターゲットを観光客に絞ることで、一般的なビジネスホテルとは異なる施設や客室、サービスを実現した新しいスタイルのホテルだ。ロビーや客室などの魅力をはじめ、街もホテル内の客室も楽しめるユニークな仕掛けの数々を紹介する。
 
 JR山手線「大塚駅」北口を出て歩くこと約1分、最上部に「OMO5」とロゴの入った建物が見える。星野リゾートが開発した新しいホテル「OMO5 東京大塚」(125室)だ。1階入り口には大きな木格子の装飾があり、街の中でもひときわ目立っていた。

JR山手線「大塚駅」北口、都電荒川線「大塚駅前駅」のいずれからも徒歩約1分の場所に位置する(写真:星野リゾート)

OMO5東京大塚の入り口。1階の木格子の装飾が目印だ(写真:坂本 曜平)

 「OMO(おも)」とは、星野リゾートが新しく立ち上げたホテルブランドの名前で、そのコンセプトは「寝るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市観光ホテル」。2018年4月に北海道旭川で1号となる「OMO7(おもせぶん) 旭川」を開業し、大塚は2つ目に当たる。

星野リゾート代表の星野佳路代表(写真:坂本 曜平)

 星野リゾートの星野佳路(よしはる)代表は発表会で、「ホテルを中心とした街全体を1つのリゾートと捉え、街の魅力に寄り添う新たな都市観光ホテルを突き詰める」と話した。OMOの強みは、ターゲットを観光客に絞ることだ。それによって、「ロケーションが変わる、施設が変わる、そしてサービスが変わる」と星野代表は言う。OMOは具体的に宿泊体験の何を変えてくれるのだろうか。OMO5東京大塚の魅力と共にお伝えする。
 
 

ホテルの宿泊客を街に送り出す「Go-KINJO」

 木組み格子に囲まれたエントランスに入り、エレベーターで4階に上がるとホテルのロビーに着く。通路左手の壁を見ると、縦2m×横3mの巨大な「ご近所マップ」が掛かっていた。「ご近所マップ」とは、OMOが提供する新サービス「Go-KINJO(ゴーキンジョ)」の2大コンテンツの1つ。街を知り尽くしたOMOスタッフが、こだわりのスポットを独断で選び、それぞれマップに書き込んでいる。情報は随時更新し、その日のお薦めルートも掲載するため、利用客は街の最新情報を確認してから外に出掛けられる。

「OMO5 東京大塚」の「ご近所マップ」(写真:星野リゾート)

1人では気付けないようなディープな街の魅力を、ホテルスタッフ扮する「OMOレンジャー」が案内してくれる(写真:星野リゾート)

 「Go-KINJO」サービスのもう1つの売りが、「OMOレンジャー」だ。OMOレンジャーとは、OMOスタッフ扮するレンジャーが、友達感覚で利用客を街に案内するという新たな形の地域ガイドツアー。利用客はガイドブックに載っていないような街の魅力を知り、様々なコトやモノに触れながら、街に溶け込める。
 
 
 
 
 

OMOレンジャーの提供するコースは全部で5種類。散歩やグルメ、ナイトカルチャーなど、自分の興味に合ったコースを選択できる。散歩コースは無料。その他のコースは2時間で1人当たり1000円。写真は、「OMO7 旭川」のご近所マップとOMOレンジャーたち(写真:星野リゾート)

 星野代表は、「これまでホテルとその周辺施設は競合関係にあった。だが、OMOのコンセプトを掲げることで、ホテルと近隣が一緒になって観光客の満足度を高めることができる」と話す。

「はたご」をイメージしたインテリアデザイン

ロビーラウンジ「OMOベース」。テラスからは、JR山手線や都電を見下ろせる(写真:星野リゾート)

 街の魅力に触れて、観光を楽しんでホテルに帰ってきた観光客に、館内も楽しんでもらいたい――。その思いで、星野リゾートは施設の空間デザインにも様々な工夫を凝らした。「ご近所マップ」を掲示した通路の先には、ロビーラウンジの「OMOベース」が広がる。地域ならではのデザインを施し、地域情報を提供することで観光客と地域をつなぐことにこだわった。1階の入り口と同じように、木格子をイメージしたデザインとした。
 

OMOベースに併設したオールデイダイニング「OMOカフェ」。出発前やホテルに帰ってきた後などに、宿泊客が利用できる(写真:星野リゾート)

 

内装設計者である佐々木達郎建築設計事務所の佐々木達郎代表(写真:坂本 曜平)

 内装を設計したのは佐々木達郎建築設計事務所(東京都渋谷区)の佐々木達郎代表。「大塚らしさ」を「日本らしさ」に置き換えて、デザインのモチーフを旅籠(はたご)に決めたと言う。「旅籠のような、昔から一般市民が気軽に使える宿をつくらなければいけないという話になった。『旅の籠(かご)』と書くことから、かごに見立てた木格子をイメージした」と話す。
 
 
 
 
 
 
 
 

OMO5東京大塚の外観(写真:坂本 曜平)

 インテリアの木格子はホテルの外観デザインにも重要な役割を果たしている。佐々木代表は、ホテル全体の設計・施工を担当した竹中工務店と打ち合わせを重ね、ファサード(建物の正面)とインテリアで木格子のイメージが連動するようにした。さらに、開口部を大きくとることで、外からインテリアの木格子が見え、インテリアもファサードの役割を担うような形となっている。
 「一般的に都心部の駅前などに立つビジネスホテルは、窓が小さく、閉鎖的な印象があった。それは良くないと考え、都市空間を変えていくという意味も込めて、開口部を大きくとった。それによって、ロビーや客室などのインテリアの木格子が外から見え、街からも建物内の気配をなんとなく感じられるような面白いファサードを実現できたと思う」と佐々木代表は説明する。

「部屋に帰っても楽しめる」客室レイアウト

 OMOの客室は、「寝るためだけの部屋」というイメージを取り払い、「旅のテンションを下げない、部屋に帰ってきても楽しめる」レイアウトを実現した。名称も、「YAGURA Room(やぐら るーむ)」と楽しげな雰囲気だ。

OMO5東京大塚の客室「YAGURA Room(やぐら るーむ)」(資料:星野リゾート)

 星野代表は「世界のホテルのなかでも、見たことのないような客室レイアウトを達成できた」と自信を見せる。YAGURA Roomの特徴は、高床式ベッド「やぐら寝台」だ。このベッドは星野代表の「1室の客室定員を3人か4人にできないか」という要望で設置が決まった。

客室玄関から見た部屋の様子。右奥に見えるのが高床式ベッド「やぐら寝台」だ。高床式にすることで、ベッド下空間を活用する(写真:星野リゾート)

 OMO5 東京大塚の客室1室の広さは約19m2。一般的なホテルではベッドしか置くことができず、3人泊まるには少々窮屈だ。宿泊客の居場所もベッドの上だけに限られてしまう。そこで、ベッドを高床式にすることで空間を立体的に使えるようにした。ベッド下の空間は「くつろぎ寝台」と呼ぶソファースペースとし、19m2の客室で定員3人を実現した。また、客室を入ると、住宅の玄関のように靴を脱ぐシステムで、ソファ以外にもくつろげる空間を確保した。

ベッド下の空間を生かして、ソファースペースの「くつろぎ寝台」とした。靴を脱いでくつろげる(写真:坂本 曜平) 「やぐら寝台」の上部は、ベッドスペースとなっている(写真:坂本 曜平)

 客室について佐々木代表は、「まず日本らしく玄関で靴を脱ぐことや、洗い場のあるお風呂にすることにこだわった。ただし、そうしたお風呂だと脱衣スペースを確保しなくてはならないが、天井に設置したロールスクリーンを下ろすことで、空間を区切り、客室の入り口が脱衣スペースとなるようにした」と語る。

洗い場のある広いお風呂場を実現(写真:星野リゾート) やぐら寝台の手前にあるロールスクリーンを下ろせば、玄関から洗面台までの空間が脱衣所になる(写真:星野リゾート)

 
 インテリアの素材選びにもこだわりがある。「ヒノキ材のやぐら寝台を中心に、基礎地としての木そのものをありのまま見せている。そのほか一部の床に畳を使い、日本らしく自然な素材を多く使用した」と佐々木代表。こうした細かい工夫の1つひとつが、「旅のテンションを下げない、部屋に帰っても楽しめる」ホテルづくりと、日本らしい「くつろぎ」につながっていると言う。
 
 
(執筆=日経アーキテクチュア 坂本曜平)
 
 
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