新緑と渓流の絶景が続く散策路 奥入瀬渓流(青森県)

 

 

 

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青森県の十和田湖とそこから流れ出る唯一の河川である奥入瀬(おいらせ)川は特別名勝および天然記念物に指定されている。約20万年前に活動を始めた十和田火山は、その噴火によってできた陥没部に水が溜まり、やがて湖となった。それが十和田湖で、やがて湖が決壊し、長年に渡って大洪水が起こり、その時に生まれたのが奥入瀬の渓谷である。奥入瀬という大きな渓谷の中を奥入瀬川が流れていて、その全体を奥入瀬渓流と呼んでいる。奥入瀬川とともに国道102号線が奥入瀬渓流を縫うように走る。十和田湖の子ノ口(ねのくち)を起点として十和田温泉郷の一つ、焼山温泉までのおよそ15kmの間、美しい渓流と左右にいくつもの滝を眺めることができる。ほとんどの人々が十和田市や青森市からのアクセスが良い焼山方面から川の流れに向かって散策路を進んで行く。車両が走る国道とは別に散策路がきちんと整備されており、特にスポットが多い石ヶ戸(いしけど)休憩所からの9kmは、散策としてはちょうど良い距離で、途中ゆっくりと川の流れを眺めながらでも3~4時間で十和田湖畔の子ノ口まで行き着く。
 今回は、石ヶ戸休憩所の駐車場に車を置き、手前の「三乱(さみだれ)の流れ」から子ノ口へ向かって撮影をスタートした。

水の流れが美しい奥入瀬渓流:動画 https://youtu.be/91GzK8GLHTQ

三乱の流れ:動画 https://youtu.be/UorIgC6BhNA

 奥入瀬渓流を代表する流れの一つ。川中にゴツゴツとした大きな岩が整然と並んでいるようにも見え、その岩によって一つだった流れが三つにも別れていく様子からこの名が付けられたという。周囲の林とも相まって一つの景色として見ごたえがある。

石ヶ戸休憩所

 多くの人がここまでバスや自動車でやってきて、散策をスタートさせる。休憩所には奥入瀬渓流の立体模型や、歴史を紹介するパネルが展示され、渓流の様子がよくわかる。トイレはもちろん、売店があったり軽食などもとることができるので、いつも旅人で賑わっている。
 

石ヶ戸の瀬:動画 https://youtu.be/B8CYED7wiow

 石ヶ戸休憩所の入り口から外廊下を通り、階段を降りると散策路が始まる。右手に美しい清流を眺めながら歩くと川幅が急に狭まり、流れが急に速くなる場所、石ヶ戸の瀬に行き着く。先ほどの三乱の流れとは異なり、大小の苔むした岩が不規則に並んでおり、全体を見ると実にバランスのいい芸術作品のようにも見える。大きな岩から伸びる樹木もあり、奥入瀬の永い歴史を見とることができる。たくさんの人々が静かに佇んでおり、皆一様に自然の崇高さを感じているようだ。  

阿修羅の流れ:動画 https://youtu.be/8p_25BYc350

 石ヶ戸の瀬から上流へ少し歩くと、右側には溶結凝灰岩と呼ばれる岩の断崖が見られ、奥入瀬の渓谷の成り立ちを垣間見ることができる。
 その先の阿修羅の流れは奥入瀬渓流を代表するといっても良い流れである。場所もちょうど焼山と子ノ口の中間ほどで、少し前に橋を渡って、散策路の左側にその流れはある。樹々や岩の合間を縫って強くダイナミックな流れとなってこちらへ向かってくる。まさに日本画!と言いたくなるほど美しく、ここの写真は奥入瀬渓流を紹介する場面でよく見る。多くの人々が立ち止まり、しばしその流れを見つめる。三脚を立てて本格的に撮影する人も多い。海外からの観光客も多く、日本語以外の会話が周囲から度々聞こえてくる。

千筋の滝:動画 https://youtu.be/ExPOj6jvXEs

 阿修羅の流れから10分ほど歩くと、左側にこちらも奥入瀬の歴史を象徴するような岩壁が現れる。何段にも別れたその岩壁をいくつもの筋となって湧き水が流れ落ちる。静かで美しい繊細な眺めである。ベンチなども設置され、滝を眺めながら談笑する方もいる。

白布の滝:動画 https://youtu.be/SmWIJyBfvOs

 奥入瀬渓流には周囲の山々からも小川や滝となって水が流れ込む。その一つがこの滝である。樹々の間からわずかに見えるその姿はある意味神々しく、奥入瀬川のその先ということもあり、叶わない願いのような遠い存在、いとおしささえ感じさせる。

雲井の滝:動画 https://youtu.be/lGKCrRWFMJQ

 この滝は散策路から少し山へ入った場所にある。散策路からも見ることが出来るが、近くまで行くと滝壺まで臨むことが出来る。高さ25m、2段になった滝は美しい流れを描き、エレガントな印象さえ覚える。

銚子大滝:動画 https://youtu.be/zTGrAhSWlBM

 幅20m、高さ7m で本流にかかる唯一の滝である。奥入瀬川を遡上し、十和田湖に向かって進もうとする魚を拒む「魚どめの滝」とも呼ばれる。豪快で勇壮な姿は、まさに奥入瀬渓流を象徴する美しさである。自然が創ったものにしては、あまりにも均整のとれた姿である。
 
 
 およそ5時間、10kmあまりの撮影行だった。ある時は川の流れに、ある時は川向こうの滝の流れに。そして滝壺まで迫ることが出来る迫力。飽きることのない奥入瀬渓流。しかも新緑の清々しさと、川のみずみずしさ、歴史の壮大さに触れる散策を楽しむことができた。春から秋まで半年以上、たくさんの観光客で賑わう奥入瀬渓流。そんな奥入瀬渓流の自然環境を守るため、地元では『奥入瀬渓流エコツーリズムプロジェクト』を展開しており、秋の紅葉の季節にはマイカー規制が行われるなど、自然環境保全の理解浸透・啓発を行っている。自然を楽しむことと、自然を守ることは同時に大切なことだと思う。

撮影・執筆/松本 新:SHARATA 株式会社アドワイヅ http://www.sharata.info/
《SHARATAでは、日本の絶景を4K映像で紹介しています。たくさんの方々に多くの絶景をお楽しみいただきたいと考えています。》

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