「能」の誕生は、イギリスの劇作家シェイクスピアの時代よりも3世紀早い14世紀半ばにさかのぼります。8世紀に中国大陸から伝来していた滑稽な物真似(ものまね)や軽業(かるわざ)を元にして、芸術的な演劇スタイルに大成したのは世阿弥(ぜあみ)でした。彼は人気役者・観阿弥(かんあみ)の長男として1363年に誕生。12歳の時に父親と共演した舞台で、最高権力者の将軍・足利義満に才能を認められ、その偉大な援助を受けることで「能」を確立する一歩を踏み出しました。ヨーロッパではルネサンス運動が起きていたころです。彼は作家であり演出家・主演者として、50曲(演目のこと)近い作品を残し、600年後の今も忠実に演じられています。それは、日本人の根源にある精神性を伝え続けているとも言えます。