奈良-桜の季節に

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 近畿地方の古都・奈良は大阪からも京都からも1時間足らず。かつての都であったこの地には貴重な歴史的建造物などが数多く存在する。国宝建造物数は国内最多といわれる。一方、自然環境も多彩で、海はないものの中南部には険しい山々が続き、山間には寺院などがひっそりと点在する。春になると奈良を代表する世界遺産・吉野山は桜に覆われ、多くの観光客で賑わう。
 2021年「吉野山の桜が満開」のニュースとともに奈良を訪れた。

1. 吉野山
動画:https://youtu.be/S3pMna5TYs0

 奈良市の中心部から車で1時間半ほど、山間部をしばらく進むと桜色に染まった山が見えてくる。平安時代に植えられえた桜の木は3万本ともいわれ、うわさどおり見事な眺めである。4月初旬に山の裾から順に開花してゆく。特に「上千本(かみせんぼん)」と呼ばれる名所の桜は圧巻で日本一の桜の名所とも言われる。この日も多くの観光客が足を止め日本の桜に酔いしれていた。

2. 談山(たんざん)神社
動画:https://youtu.be/3sS–SrdfFo

 吉野山を下って30分ほど、今から1400年前ころに建造され、こちらも桜の名所となっている。大化の改新の談合をこの場所で行なったことから名付けられたとされ、飛鳥時代の政治家、藤原鎌足が祀(まつ)られていることでも知られている。斜面となっている敷地の高い場所に建つ十三重塔(じゅうさんじゅうのとう)が美しく、その横に見ることができる樹齢600年ともいわれる「薄墨桜(うすずみざくら)」は必見である。

3. 石舞台古墳
動画:https://youtu.be/J68FqaR0_cU

 さらに北上し「日本人の心の故郷」とも呼ばれる明日香村へ入った。飛鳥時代の史跡が数多く発掘されており、かつては飛鳥村と呼ばれていた。石舞台古墳は国の特別史跡で、飛鳥時代の政治家、蘇我馬子が埋葬されているとの説が有力となっている。古墳には巨大な石が積まれており、かつて千数百年前の人力でこのような造作が可能であったのか不思議である。桜は古墳を囲むようにして咲いており、その周りでは家族連れなどがピクニックを楽しんだりする。

4. 室生寺
動画:https://youtu.be/aPZP6HhZXPw

 奈良県でも東部の山間に位置する寺院である。室生とは地名であり、俗世を離れた山林修業の場でもある。同じ真言宗である高野山が女人禁制であったのに対し、別名「女人高野」と呼ばれるように、室生寺は江戸時代からは女性の参詣が許された。「金堂」と呼ばれる国宝である建造物は荘厳な雰囲気があり、その屋根越しに桜の木が風に揺れ、美しい。

5. 長岳寺(ちょうがくじ)
動画:https://youtu.be/nRhgT9YCW6g

 こちらも真言宗の寺院であり9世紀に建立された。市街地に近い場所にあり、大門(だいもん)と呼ばれる門を入ると、池を中心とした庭園と桜の木が美しい。5月に咲くツツジも見事で、約1000本の平戸つつじは有名である。池の周囲を歩いて一周でき、桜を見ながらの散策も楽しい。毎年秋に開帳される大地獄絵はその大きさと精緻さは他に類を見ない。

6. 法隆寺
動画:https://youtu.be/F9NL9auzVM8

 こちらは奈良県の西部、斑鳩町(いかるがちょう)にある聖徳太子ゆかりの寺院であり、現存する世界最古の木造建築物である。7世紀に創建された。建物群を囲むようにして桜の木が植えられ、18万平方メートルあまりの境内を引き立てる。

7. 東大寺
動画:https://youtu.be/vz6t9RQxP0g

 奈良時代に聖武天皇が国力を尽くして建立したと言われるとおり、その存在感と厳かな雰囲気には圧倒される。特にその中心である大仏殿は存在感がひときわで、多くの人々が参拝に訪れる。その名のとおり大仏殿には盧舎那仏(るしゃなぶつ)と呼ばれる奈良大仏が鎮座し、参拝者を見つめる。周囲には桜の木が植えられ、参拝者を楽しませる。

8. 奈良公園
動画:https://youtu.be/0MoCAyheJOQ

 東大寺のすぐ横に広がる公園は鹿の徘遊(はいゆう)で有名な奈良公園である。本来は東大寺なども含め正式名称は「奈良県立都市公園 奈良公園」である。緑の芝生と桜の花が美しい。ここの鹿は約1300頭といわれ、神の遣いとされ手厚く保護されている。しばしたたずむ鹿と、咲き誇る桜の画(え)は心を和ませる。

撮影後記
 奈良県中央部に位置する吉野山から北上するように奈良の桜を追った。京都のように古都の主張のようなものもなく、大阪のような賑(にぎ)わいもないが、どこか歴史の重さと、古都の奥ゆかしさを感じた撮影行であった。奈良はまた、紅葉の美しさでも知られている。華やかな桜と古都の相性もとても良いが、紅葉もまた古都らしい雰囲気を醸(かも)し出すだろう。ぜひまた秋にも訪れたいと思い、奈良を後にした。

撮影・執筆/松本 新:SHARATA 株式会社アドワイヅ http://www.sharata.net/
《SHARATAでは、日本の絶景を4K映像で紹介しています。たくさんの方々に多くの絶景をお楽しみいただきたいと考えています。》

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