京都国際マンガミュージアムでコミュニケーションを楽しむ

2015-05-28

 

京都国際マンガミュージアムでコミュニケーションを楽しむ

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京都国際マンガミュージアム(MM)に行ってきた。MMの建物は一部を除いて、かつて地域の子供たちを育てた歴史ある小学校を有効利用したものだ。厚いコンクリートの壁、木の床や扉は、ミュージアムに独特の重厚感と温もりを与えている。入館者が座ったり、寝転んだりしながら、好きなマンガを読んでいる屋外の広場は、以前子供たちが賑やかに遊び回った校庭だ。MMの楽しみ方は人それぞれだが、今回は最近多くなった外国人旅行者も含めて、MMに集まる人たちとコミュニケーションを楽しめる参加型のアクティビティを紹介したい。

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紙芝居パフォーマンス
(於:MM 2階紙芝居小屋)

 紙芝居小屋に入るとビックリしたのは、参加している子供たちの元気さだ。「参加している」と書いたのは、紙芝居は双方向の、まさに参加型のエンターテイメントだからだ。
紙芝居師の1人、「らっきょむ」こと荒木喜勇(よしたけ)さんは、各回約30分のパフォーマンスの間、まず初めに紙芝居を利用したクイズをやり、後半はその日のお客の反応によって、『黄金バット』などの古くからある紙芝居か、自ら作った新作紙芝居のどちらかをやるという。

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 クイズは例えば一瞬だけ見せた紙芝居の中に何羽のペンギンがいたか、と聞いて観客に答えさせる。子供たちは、学校の先生が参考のために視察に来るというほど、元気にハツラツと手を挙げる。「3!」「少なすぎるわ」「21!」「多すぎやで!」「8!」「惜しい!」「10!」「正解!じゃなくて、正解は8と10の間」「ハイ!ハイ!ハイ!」ここでらっきょむは、1度間違えて自信をなくしている子供を当てた。簡単な問題で自信を取り戻させるためだ。「ハイ、そこの女の子!」「57!」「なんでやねん。8と10の間って言うたやろ!?」「でもおもろ過ぎるから、賞品あげるわ」

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 パフォーマンスが終わってから、らっきょむの話を聞いた。「さっきの子はシャイだから自信を付けさせようと思ったら、その上を行ってアホやった(笑)。でもここは学校と違うんで、他のお客が『おもろい』と思ったら、正解でなくてもいいんです」
らっきょむは、子供が発するものを認めて、参加者みんなで楽しみたいという。「でも中には邪魔をするように、痛々しいほど必死に人の気を引こうとする子がいる。きっといつも親がかまってくれへんやろな、と思うんです」
昭和25年のピーク時には全国に約5万人いた紙芝居師が、2008年の記録では20名前後になってしまった。それを生業に選んだらっきょむは、兵庫県西宮の生まれで、子供の頃はマンガ家かお笑い芸人になりたかった。大学卒業後農業の世界に飛び込んでみて「人の命は(農作物も含め)周りに“生かされている”」ということに気が付いた。だから紙芝居師として子供に向き合うとき、その子が持っているものを「生かしてあげたい」との思いでいるという。

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 最近は外国人のお客さんも多い。今回出会ったオーストラリアから日本語を勉強しに来ているナタリアとイリアの2人に聞いてみた。ナタリアはきれいな日本語を話し、らっきょむの早口な関西弁もかなり理解してよく笑っていた。まだ「日本語は少しだけ」というイリアは紙芝居の日本語は難しいが、それでも、感情のこもった語りと声の調子で楽しめたそうだ。2人はこれから1年間京都で日本語を学びながら、将来のことを考えたいという。MMのことはインターネットで知って来てみたが、今後は日本語の勉強のためにも、マンガを読みに来ることになりそうだ。

似顔絵コーナー(於:MM1階)

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 似顔絵コーナーで出会ったキャサリンとロバートは、ロンドンから来て2週間の観光旅行中。MMのことは、ロンリープラネットに「京都でお寺以外にぜひ見るべきものとして一押し」と評価されていたので来てみたとのこと。ロバートは「アキラ(作:大友克洋)」で日本のアニメにはまり、その他「鉄コン筋クリート(作:松本大洋)」なども好きだという。似顔絵はロンドンにもあるがもっとリアルな絵で、ここのはアニメ・マンガチックでユニーク。「お土産に最高だよ」と、15分ほどで出来上がった自分たちの似顔絵を見て満足そうだった。

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 彼らを描いた「おかやま」こと岡山隆俊さんに、似顔絵アーティストになったきっかけなどを聞いた。
おかやまは京都精華大学の出身で、先輩の紹介で似顔絵を描き始めた。似顔絵の楽しさは、やはり目の前で喜んでもらえることだという。描くときに大切にしていることは、良い思い出になるようにすること。例えば、春には背景に桜の花をあしらったり、服がユニークならばTシャツの柄なども細部まで描いたり、外国人の場合は、希望を聞いて洋服を着物やニンジャのコスチュームに変えたりしている。外国人とのコミュニケーションは、マンガが共通語となるので意外に通じる。「その他のシチュエーションでは、全く話せないんですけどね」と笑った。

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 隣の席で描いてもらっていたファミリーは、フランスから来たドロムジー(Dromzee)一家。日本が大好きな父親のジャン・フランソワ(Jean-François)は今回が18回目の来日で6週間滞在する。母親のクローデ(Claude)は2週間、娘と孫たちは3週間日本を楽しむ予定だ。娘のアン・クレア(Anne-Claire)と子供のカプチーネ(Capucine)、ニノ(Nino)の3人が、それぞれ似顔絵を描いてもらった。ニノは絵が好きで、ママが描いてもらっている間に、自分の画材を出して、逆にアーティストの似顔絵を描き出し、最後にプレゼントしていた。言葉は通じなくても、アートがコミュニケーションの道具になる微笑ましい場面だった。
ドロムジー一家は、紙芝居も楽しんだという。

マンガワークショップ(於:MM1階吹抜け)
『キャラクター制作ワークショップ』*ワークショップの内容は時期により変更有。

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 紙芝居や似顔絵コーナーがそれぞれのアーティストのパフォーマンスを楽しみ、彼らと交流するアトラクションであるのに対し、マンガワークショップは自分で実際にイラストやマンガを描くことで、一緒に来た友人や周りの参加者と交流ができる。
大阪から来て、親子三代でマンガのキャラクター制作を楽しんでいるご一家に話を伺った。濱田綾子さんは専業主婦だが、元々テキスタイルデザインの仕事をし、絵本を出版したこともあるアーティストで、ワークショップで描いたキャラクターの完成度の高さにMMのスタッフも感心していた。一緒にキャラクター制作に没頭している長男の嵩翔(たけと)君はマンガ家志望の中三で、来年は母親の出身校でもある港南造形高校への進学を目指している。

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 綾子さんの実母である橋本和子さんは、2人がマンガを描いている様子を嬉しそうに眺めながら「女の子は良いけれど、孫は男なので将来のことを考えると心配だったんですけど、館内で見つけた京都精華大学の『人文学部を卒業して何になるか。』というこの冊子を読んで、色々な職業につながるんだな、と安心しました。」と話してくれた。

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 キャラクター制作ワークショップの会場には掲示板があって、絵が描けない人はキャラクター設定だけ考えて掲示板に貼り、ほかの人に絵を完成してもらうことも可能だ。濱田さんご一家と、ほかの人のアイディアをチェックすると、外国人が残した面白いキャラクター設定を発見。「『愛で人を幸せにする力を持った携帯電話のキャラクター』で絵本を描いてみようかしら」と綾子さんの制作意欲に火がついた。「息子に負けないように、私もライバルとして頑張ります」

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 親子が楽しい時間を共有したり、アイディアの掲示板を通して、会ったこともない人と交流したりできるのがワークショップの魅力のようだ。マンガを描くより読む方が好きな次男の暉翔(あきと)君も、『マンガの壁』と呼ばれる書棚に囲まれた夢のようなマンガの世界から戻って来た。皆で記念写真を撮ったとき、楽しい時間を過ごした後の笑顔が印象的だった。

 

研究員への特別インタビュー

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 MMは入館者がマンガを楽しむだけでなく、マンガ・アニメに関する研究機関でもある。MM内にある京都精華大学国際マンガ研究センターの研究員ユー・スギョンさんにお話を伺った。
ユーさんは韓国アニメーション高校を卒業し、京都精華大学から同大学院に進み、MMの研究員になったマンガ研究のエリートで、完璧な日本語を話すと同時に英語・フランス語も堪能という才女だ。記者の質問によどみなく明確に答えてくれた。

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Q:どのような研究をしていますか。
A:主に少女マンガの視覚表現について、日本の過去と現在、また韓国のマンガと日本のものとの違いを研究しています。例えばオノマトペと呼ばれる擬態語・擬音語の時代による違いでは、昔は怒った絵は怒った表情に「プーン」とか音でも表現しましたが、現代ではダサく感じます。今は登場人物の表情などで表すことが多く、小さい文字で「イラッ」と描く程度です。またマンガ記号と呼ばれるマークの類も変遷があり、例えば怒りマーク(右上の画像)は1960~70年代以降使われるようになりました。

Q:日本におけるマンガの現況を雑誌・単行本・電子書籍の販売数などの点から教えてください。
A:昔との大きな違いは雑誌の販売部数が減少し力が弱くなったことです。80年代に毎週500万部売れていた少年マンガ雑誌が今では半減しています。一方で単行本の部数はあまり変わっていません。また電子書籍、WEBマンガは思ったほど伸びておらず、日本人が紙媒体を好む傾向が表れています。ちなみに韓国では紙媒体が減って、WEBマンガが強くなっています。
読者層については、小さい子供が少なくなっています。理由としてはゲームなど子供の遊びの選択肢が増えていることが挙げられます。「少年ジャンプ」は以前より大人や女性の読者が増えているのが特徴です。

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Q:日本のマンガとユーさんの母国である韓国のマンガではどこが違いますか。
A:1998年に韓国で日本文化開放が行われる前も、日本のマンガは海賊版とライセンス版で読まれていました。韓国のマンガのベースは日本のマンガから強い影響を受けたと思います。ただ読めば「これは日本のマンガだ」と違いが判りました。大きな違いは日本のマンガが雑誌中心であったことで、あるマンガがヒットするとマンガ家や編集者により他の作品にもその特徴が取り入れられ、それにより流行が生まれ、雑誌ごとの色が生まれ、それを取り巻くコミュニティとも呼べるものが発達しました。雑誌には読者の声(希望)が届き、編集者は流行を作り出し販売部数を上げるために作家に影響力を行使したこともあります。 編集者の力が強かったと言えます。一方韓国では80年代までマンガ雑誌が普及せず、作家個人が出版社に売り込み単行本として出版するシステムでした。韓国では作家の個性が中心で、日本のように流行が作られることは非常に少なかったと思います。

Q:海外でマンガやアニメがどのように普及していますか。どの国で、どのような層に、どんなマンガが受けているのでしょうか。
A:欧米は80年代から90年代がピークでした。その年代が大人になっても読んでいるのが現状です。今若い世代では若干停滞しています。日本では「ワンピース」が人気ですが、欧米ではむしろ「ナルト」の方が受けています。理由としては、海賊は珍しくないけれども、ナルトのアジアンテーストまたニンジャの人気が挙げられると思います。「ドラエモン」はアジアを中心に人気があります。

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マミューのふわふわオムライス

Q:研究員に一般の入館者が質問することはできますか。
A:研究閲覧室には担当職員(学芸員)がいて質問に答えています。研究員は入館者と直接会うことはありませんが、詳しい説明が必要な場合は後から研修閲覧室の担当者を通して回答することもあります。

Q:これまでに海外から面白い問い合わせはありましたか。
A:海外のマンガ家からの質問で「日本のマンガの顔はなぜ皆同じなのか」というのがありました。先ほどの雑誌の話にありましたように、日本のマンガは雑誌によって「色」があるので、ひょっとすると同じ雑誌系のマンガを読んでそう感じたのかもしれません。

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MMマスコット
キャラクター
「マミュー」

Q:研究員としてお勧めのMMの楽しみ方を教えてください。
A:日本人の場合、日本人にとってマンガはあまりにも身近な存在であることから、かえって気づかないことがあると思います。たとえば、なぜ学校で勉強したこともないマンガの記号を当たり前のように理解しているかなど、考えたこともないですね。マンガとは何かを説明するMMの常設展、あらゆるマンガ関連のイベントなどにご参加いただき、MMではいつもと違う角度からマンガを楽しんでいただきたいです。外国人の場合は、老若男女を問わず館内でマンガを読んで楽しむ日本人の姿をみて日本におけるマンガの意味や、マンガの持つ文化・歴史的価値について考えるきっかけになってほしいと思います。

 

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京都国際マンガミュージアム
〒604-0846 京都市中京区烏丸通御池上る
TEL:075-254-7414
FAX:075-254-7424
URL:http://www.kyotomm.jp
開館時間:10:00-18:00
休館日:毎週水曜日 (休祝日の場合は翌日)、年末年始、メンテナンス期間
最寄駅:京都市営地下鉄 烏丸線・東西線
烏丸御池駅 2番出口 烏丸通を北へ徒歩2分

 

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