京雛人形

2014-02-19

 

京雛人形

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3月3日の雛祭りが近づいてきました。「桃の節句」ともいわれる雛祭りの起源は古く平安時代にさかのぼります。中国の習慣を取り入れ、3月最初の巳の日に子供の身代わりとして紙の人形を川や海に流して、災難や病気を避けるために祈ったのが始まりとされています。その後長い年月の間に厄払いという意味が薄れ、女子が人形で遊ぶ習慣と合わさって江戸時代には雛祭りとして華やかな行事となりました。雛祭りになくてはならないのが雛人形です。京文化の伝統を大切に守り雛人形を1つ1つ手作りしている「安藤人形店」を訪ねて、制作工程を拝見しながら、京雛人形の特徴と職人としてのこだわり、人形への思いなどを伺いました。


京雛人形の特徴

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 京雛人形作りの最大の特徴は、国産の高級な材料を使い全て手作りであることと、人形の各部分をそれぞれ専門の高度な技術を持つ職人が分業で作っていることだといわれています。
 頭を作るのが「頭師(かしらし)」、髪の毛は「髪付師」、手足を作る「手足師」、そしてそれらを総合的にプロデュースして人形を形作るのが「着付師」です。通常人形師と呼ばれるのは着付師のことで、安藤人形店はその着付師に当ります。
 髪付師が使う人形の髪の毛は絹100%で、着付師が人形に着せる着物は、西陣などで人形用に特別に作った高品質の布地を使っています。

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 各部の制作は熟練の技と長時間の作業を必要とし、例えば頭は十数段階の制作工程があり、その中でも「中塗り」や「上塗り」という白いきめ細かい肌の色を塗っていく工程は、塗っては乾かすことをそれぞれ5回~10回も繰り返す手間のかかる仕事です。
 京雛人形の着物は伝統的な公家装束を忠実に再現しており、特に男雛、女雛は京都御所にいらした天皇、皇后を象徴しています。女雛の十二単は華やかな宮廷文化を今に伝え、人形の顔は優雅さと気品にあふれています。
 京都で雛人形を飾りつけするときの男雛、女雛の位置は、関東など他の地域と違って男雛が向かって右側になります。これは遣唐使の時代に中国から伝わったといわれる「左上位」(皇帝は北極星を背にして南向きで座り、日が昇る東側(左側)をより高貴な位置とする)の伝統礼法に従っているからだそうです(現在は天皇皇后両陛下も公式行事では国際儀礼に合わせた「右上位」の並び方をされています)。

 
制作工程とこだわり

 安藤人形店三代目安藤忠彦さん(着付師としての名は三代目安藤桂甫(けいほ))に、京雛人形制作の工程を見せていただきながら、人形師としてのこだわりを伺いました。(取材当日は「還暦雛」と呼ばれる還暦を祝う赤い着物の人形を制作中でした。工程は他の京雛人形と同様です)
工程の最初は藁でできた胴に襟元の着付をして足を付け、袴の裾を整えるところから始まりました。
次に袴をはかせ、前に伸ばしていた足を体の前で組ませます。また藁胴の肩に千枚通しで横に穴を通します。
穴に人形のサイズに合わせた針金を通し、藁の詰まった左右の腕を付けます。
両腕に着物の袖を通して、襟元を合わせ、着物を整えます。このとき人形はまだ両腕を広げた状態のままです。

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人の体の自然な丸みを表現するために、必要な個所に綿を詰めていきます。綿の分量に決まりはなく、全て着付師の勘で行われます。
手は手足師が作ったものを必要な長さに切って、腕の針金の先に取り付けます。
人形の頭は頭師によって丹精込めて作られ、その首には頭師の名が刻まれています。
手先を付けた人形の腕を肩と肘で曲げる工程を「腕折り(かいなおり)」と呼びます。折り方で人形の微妙な手の動きを表現するので、着付師の技量の見せ場であり、折り方を見れば誰の作品か分かるとさえいわれます。

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(腕折り作業の動画URL:http://youtu.be/yDSbfhAqw5w

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 三代目安藤桂甫氏は、人形の各部を担当する職人達のこだわりを大切にしながら、心を込めて人形を作り上げ、最後に「贈られた人達(子供達)をしっかり見守ってくれ」と人形に言い聞かせて送り出すそうです。

 

 


人形への思い

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 三代目安藤桂甫氏の奥様で人形コーディネーターの安藤啓子さんにお話を伺いました。
 女雛が着る十二単は平安時代からの伝統ある衣装で、今でも皇室で婚礼があるときには必ず着ることになっています。安藤人形店では、この1200年の伝統ある衣装を大切に守ることに誇りを感じています。また、分業で制作する雛人形に、頭を差して最後に命を入れる役割にも誇りを持って、子供達の成長と幸せを願いながら、着付師は日々の仕事に励んでいます。雛人形の起源は親の子供に対する愛情の表れであり、「子供を守り、家族の絆を見守る雛人形を作ることに何よりも誇りを感じます」と安藤さんは傍らの雛人形を優しい目で眺めながらおっしゃいました。

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 また安藤さんは七段飾りの雛段を見ながら、人々がそれを親子で飾る素敵な対話の瞬間をいつも想像していると言います。赤い毛氈は魔除けの意味もあり、子供を思う親心の表れです。また五段目に並ぶ「仕丁(じちょう)」という下働きの3人が酔っぱらって、1人は笑い、もう1人は怒り、最後の1人が泣いているのも、親がどんなときにも子供を見守っていて、「悲しければ泣いてもいいんだよ」という優しい親心を表しているそうです。


人形着付体験

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 安藤人形店では人形の着付を体験することができます。京雛人形は時間的にも技術的にも難しいため、市松人形という比較的に着付がしやすい子供の姿をした人形作りを体験します。
 所要時間は1時間半から2時間ほどで、まず店内や工房を見学した後、桂甫氏が人形の歴史について自ら説明をします。人形の衣装・帯等を各自選び、桂甫氏の指導で着付けます。出来上がった人形との記念撮影をした後は、お茶を飲みながら質疑応答の時間を取ります。海外からのお客様のためには、夕方までに機内持ち込み用に荷造りをしてホテルへ配達することも可能だそうです。
 本物の伝統工芸士が指導する人形作り体験として、本物志向のお客様方にぜひお勧めしたい文化体験です。


海外の要人に雛人形を献上

 経済産業大臣認定の『伝統工芸士』であり、京都府の伝統産業優秀技術者として『京の名工』の称号を持つ三代目安藤桂甫氏は、国内のみならず海外でも京雛人形の伝統の技を伝える活動を行ってきました。平成19年には、タイ王国プミポン国王陛下および中国温家宝首相(当時)に雛人形を献上しています。

 

 

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安藤人形店

〒602-8034  京都府京都市上京区油小路通丸太町上ル
TEL: 075-231-7466 FAX: 075-221-0583
http://www.ando-doll.com

 


写真右が三代目安藤桂甫氏、左が奥様の安藤啓子さん

 

 

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