雛(ひな)のつるし飾りは、桃の節句に女の子のいる家庭でお雛さまの雛段飾りの両脇に飾られる。温かい色使いの飾りの1つ1つは幼児の手ぐらいの大きさ。今では日本の各地で目にするようになったが、伊豆半島の南東に位置する稲取(静岡県賀茂郡東伊豆町)が発祥の地である。伊豆半島を代表する手工芸品を求めて、風光明媚な港町を訪ねた。
願うものが形になっている
「雛のつるし飾り」は江戸時代末期から伝わる伊豆稲取ならではの風習である。つるされる飾り物は、初節句を迎える女の子の健康や良縁を願って母や祖母が1つ1つ手づくりする。雛人形の段飾りの両脇に飾られるのが本来の形だったが、アパート住まいなど手狭な環境では、つるし飾りだけで桃の節句・雛祭りをお祝いする家庭も増えている。今では、桃の節句に限らず一年中玄関や居間に和風モビールとして飾られ、日常の生活に彩りを与えている。