陶炎祭(と書いて「ひまつり」と読む)に行って驚くのは、各窯元の陶器が色も形もデザインもバラエティーにあふれていることだ。その種類の豊富さは、あれもこれもと目移りするほどで、私のように陶芸が趣味というわけではない素人にとってもワクワクするものがある。しかし、楽しんでいる内に、ところで笠間焼とは何だろうという疑問も湧いてくる。その疑問に答えてもらおうと、窯元を訪ねてみた。
「東風舎(とうふうしゃ)」は夫婦、息子、娘の家族4人で作陶している窯元で、奥様の須藤陽子さんにお話を伺った。東風舎の歴史は、まず1973年にご主人の須藤茂夫さんが、笠間市が産業振興のために陶芸家を誘致した地域に移住して築窯し、その後1982年に陽子さんと結婚して東風舎を立ち上げた。その地域は現在「陶の小径(こみち)」として、多くの陶芸家が窯を持つ笠間の名所となっている。そのような環境に育った子供たちも、今は陶芸家として自分の理想の作品を目指して作陶に励んでいる。
なぜ笠間を選んだかと伺うと、県や市が積極的に陶芸家を誘致していたこともあるが、笠間は他の産地に比べて自由な気質があり、外から移住して作陶しやすい環境だったという。笠間焼はこうでなければならないという縛りがない。また、東京から近く、東京で美術を学んだ陽子さんなどにはそれも魅力だった。
工房を訪ねて感じたのは、家族4人の作品がそれぞれ個性的な点だ。目指すものは全く別々だという。モダンアート全盛期に美術を学んだ陽子さんは、造形的なものに惹かれるため、オブジェや陶画を得意とする。それぞれ目標は違うが、家族で作陶する良さは釉薬(ゆうやく)や土の性質などについては子供たちにもアドバイスができる点だそうだ。
今後の目標を聞いてみると、海外進出はなかなか難しいので、コロナが収束したら外国人観光客にも笠間焼を知って欲しいという。EコマースはCreemaを使っていて、国内では30から50歳くらいの女性の顧客が多く、中国や台湾にも販売が可能だそうだ。