秀衡塗

2011-10-01

 

秀衡塗

 

伝統工芸 秀衡塗専門店
「翁知屋(おおちや)」

pdficon_large topics_map

 


佐々木優弥さんは、みちのく奥州において平安時代に栄華を極めた奥州藤原氏ゆかりの漆器の技を受け継ぐ秀衡塗専門店「翁知屋」の四代目です。伝統の技法を生かしつつ、独自の感性と豊かな発想で現代の暮らしに溶け込むモダンな漆器の製作も手掛ける佐々木さんに「秀衡塗」への思いを語っていただきました。

◆秀衡塗の歴史を教えてください。

秀衡塗の古代椀は16世紀頃には造られていて、当時の模様やデザインのお椀を地元の人たちは「秀衡椀」と呼んでいました。この地の漆工芸の文化において、中尊寺金色堂が漆、金、螺鈿(らでん)などで装飾されていることから分かるように、高い漆技術が既に存在していました。また、漆を塗るときに使う刷毛(はけ)や漆をこした紙など当時の道具なども発掘されていることから、秀衡塗の起源は、奥州藤原氏三代秀衡が京都から漆職人を呼び寄せてお椀などを作らせたという説もあります。しかし、今日までに発見されている古代秀衡椀は、残念ながら秀衡の時代(12世紀)に作られたものではありません。でも、漆文化はずっと生き続け、秀衡椀と呼ばれるこのお椀のスタイルは職人たちによって今も守り作られています。

秀衡椀

この道を志したきっかけや経緯をお聞かせください。

幼いころからこの道を志していたわけではありません。将来、家を継ぐことも視野には入れて、大学では経営学を学んではいましたが、ずっと先のことだと思っていました。しかし、大学4年生の夏、父が病に倒れ入院することになり、東京の一般企業に就職が決まっていた私は、突然自分の進路をあらためて考えさせられる状況になりました。そんなとき、大学の先生が「あなたがやらないことで家業が途切れてしまうことの意味をゆっくり考えてみてはどうか」と言われたのが大きなきっかけでした。一般企業に就職してある程度自分の人生が予測できる道と、一方、手探りしながら懸命にもがき進む道とのどちらが自分にとって本当に価値があるものか――私は3人兄弟の長男ですが、弟たちは家業を継ぐ意思は全くなかったので、伝統を守ることの意味を真剣に考えました。最初はいろいろ大変なこともありましたが、今はこの道を選んで良かったと思っています。

◆職人になって良かったと思いうことは??

幼いころから図工や美術はすごく好きで、夏休みの課題はやはり多少凝って作っていた記憶はあります(笑)。好きなことを仕事にできるのはやはり嬉しいですし、他人にあまりがっちり縛られたくない性格なので、会社員よりも今の方が自分に合っていると思います。祖父、叔父、そして父と代々物づくりが好きな家系で、私も同じ血が流れているのを実感する瞬間が多々あります。先代の父から「経営だけやっていてもいけない。何か作りたいものがあるなら、自分が作れるようにならなければ職人さんたちはついて来ない。」と言われました。右も左もわからない私は、職人さんに聞きながら最初はストラップなどに名前を入れるところから始めました。あれから8年、今は古代椀の復元・再現のみならず、お椀を作るろくろの技術を生かしながら、伝統的な技法をもとに、モダンでスタイリッシュな漆器のデザイン・製作も手掛けています。

モダンでスタイリッシュなグラス (OKINAシリーズ)

 

◆秀衡塗の特徴や魅力をお聞かせください。

全国にはいろんな産地の漆器はありますが、蒔絵が施された輪島塗や研ぎ出しで仕上げる津軽塗など特徴的な漆器は意外と少なく、そのほとんどは模様をあまり付けない無地のものが多いんです。しかし、秀衡塗は金で彩られた雲模様と、その間に季節の草花や果実などが描かれ、さらに菱形の金箔が配している独特な図柄が特徴です。華やかのなかにも気品を感じる漆絵と金箔をあしらった器はひと目で秀衡塗と分かり、際立ったその美しい風格に魅力を感じます。

  

大きく、鮮やかに描かれた椿が特徴の煮物椀

 

◆一番苦労される工程はどこですか?

大きく分けて「下地」、「塗り」、「絵付け」の3工程があります。大量の発注があるときは他の工房に手伝ってもらうこともありますが、基本的には敷地内にある自社工房で、私ともう1人の職人さんと2人でその全てを行っています。なかでも上塗りの工程は最も難しく、ゴミ(ホコリ)や刷毛目がいかに付かないようにきれいに塗るか、また漆の調整などとても神経を使います。工房で集中して作業していると、空気中に浮遊するホコリが落ちてくるのが分かります。できるだけホコリを立てないように細心の注意を払っています。


金箔を貼る


◆作品にかけるこだわりはなんですか?

お客様が求めている想いを形にしてあげることを最も大切にしています。どういう模様で、形で、そして材料で作って欲しいのかをお客様と何度も話し合って決めます。なかには仕上がるのに数カ月から1年もかかることがあります。しかし、その分オリジナルの品を手にするお客様の喜びもひとしおで、私はお客さまとのやり取りを通してご要望を形にする過程が一番楽しいです。


玉小箱(たまこばこ) 秀衡塗と鳴子こけしとのコラボレーション

カラーバリエーション豊かな帯止め

色漆で施された秀衡ストラップ

 

◆今後の取り組みや目標についてお聞かせください。

伝統的な秀衡塗というと、見た目が華やかというイメージを持たれる方が多いです。平泉が世界文化遺産に登録され、平泉が世界中から注目を集めている今こそ、秀衡塗の認知度をより高め、伝統的な技法を守りつつも新たな発想と遊び心を兼ね備えた、現代の生活にも受け入れられる工芸品を作り続けたいと思っています。そして、「あの工房は売り出すものが違う!」と思ってもらえるように、日本のみならず、海外でも戦える企業に育っていければと思っています。

 

伝統工芸 秀衡塗専門店 「翁知屋」

 

住所:〒029-4102 岩手県西磐井郡平泉町平泉字衣関1-7
Tel: 0191-46-2306
Fax: 0191-46-2315
定休日: 水曜日

HP:  http://www.ootiya.com/


佐々木 優弥さんプロフィール

翁知屋四代目店主。1978年神奈川県秦野市に生まれる。12歳のとき、家族で岩手県水沢市に引っ越し、高校を卒業するまで過ごし、二松学舎大学国際政治経済学部卒業後、現在、伝統的な技法や形をもとに、新しい材料・技法・発想を取り入れて、現代にも受け入れられる器の製作も手掛ける。

ページの先頭へ▲

Copyright © 2017 IHCSA. All Rights Reserved.