人それぞれの歩き遍路
17番井戸寺から13番大日寺まで逆に歩いてみた。
鹿児島県から歩いてきたという真言宗大国寺の平野眞照(しんしょう)さんは、まさに修行僧だった。「1日65km は歩くのでそれほど日数はかかっていません」という。通常の歩き遍路は1日30kmが目安なので倍以上のスピードだ。四国遍路およそ1,200kmを歩いてからまた九州へ歩いて戻るそうだ。
兵庫県の坂田史朗さんは定年退職した記念と、先立った奥様の供養で歩き遍路をしているという。そのすがすがしい笑顔がとても印象的だった。
福岡県の中島史生(しお)さんは26歳。飲食店で3年勤めて退職し、自転車で日本一周の旅をする途中、歩き遍路に挑戦しているという。将来の夢はと聞くと「有機農業をやりながら無農薬野菜を使った飲食店を経営することです」と明確な答が返ってきた。
ドイツ人のクラウス(Klaus)さんは、昨年およそ50日かけて四国遍路を結願し、今回が2回目だ。「昨年は旅の途中で財布をなくしました。誰かが見つけてくれて、次の寺に届けてくれたんです。私は財布の中身を調べる必要がないのを知っていました。何もなくなるはずがない。それが四国の旅です」誰にでも遍路体験を勧めるかと質問すると少し考えてこう答えた。「私は日本語を話しません。それでも日本の文化が好きですし、日本人に対する理解も深いので全く問題がありません。日本文化に対する興味や理解があまりなく、不自由を楽しめない人には苦痛な旅になるかも知れませんね」
四国遍路は自分と向き合う旅であり、特に歩き遍路は人と出会う旅でもある。人生の区切りや岐路に立ったとき、また閉塞感を感じた時などに人が四国へ向かいたくなる理由が分かる気がした。
外国人観光客にとっても、クラウスさんの忠告を聞いた上で数日間四国を歩くことは、日本文化に関する深い理解につながる旅となるだろう。英語、韓国語、中国語繁体字・簡体字で書かれた案内書兼地図は、第1番札所霊山寺で入手できる。また参考となるホームページを以下にご紹介する。