およそ3時間かけて丁寧に案内していただいた後、三宅さんに委員会のことを伺った。2004年にNHKの番組で針江の生活が紹介されたのをきっかけに来訪者が増え、その案内活動と自然環境保全を目的に生水の郷委員会が発足した。現在委員は63名。ほとんどの川端は個人の敷地内にあるため、見学者が勝手に見ることができない。そこでガイドが案内して、針江の自然環境と人々の生活を紹介している。ガイドの人数は平日が5名、土日は9名ほどで対応している。案内料は一般見学者の場合、川端と街中のみのコースが1,000円/人、内湖や琵琶湖湖畔まで含むと2,000円/人であり、案内料収入は地域の環境整備・保全などに利用されている。2018年度は約6000人が訪れたという。
環境保全活動としては、針江大川や中島の清掃と川藻の除去、枯れたヨシの刈り取りと火入れ(ヨシ焼き)などを行っている。
針江では昔から湧水を生水と表わしているが、委員会設立当初、清らかな湧水を表わす「清水(しょうず)」か「生水」と表わすかで議論したという。その時、湧水が多くの生き物や植物を生かしてくれており、人間の生活にも直結しているという意味で「生水」を使うことに決めた。針江の人は自然からいただいている水を粗末に扱わないなど、水に関わる「わきまえ」を代々親から受け継いでいる。生水の郷委員会は、川端文化や地域の環境保全に寄与したいと考えているが、「針江を観光地にはしたくない」という。観光地として人気が出ると本来の魅力を見失う地域がある。三宅会長の最後の言葉に、針江地区の人々のわきまえと英知を感じた。