お客様の心をつかむ コンシェルジュのおもてなし

2010-10-01

お客様の心をつかむコンシェルジュのおもてなし

 グランド ハイアット 東京 チーフコンシェルジュ 阿部 佳さん

最新のアートとファッション、そしておしゃれなショップやレストランが集まる東京六本木。その絶好のロケーションにあるのがグランド ハイアット 東京。外国人ビジネスマンや世界のセレブに愛される洗練された世界を代表するラグジュアリーな国際ホテル。そこでチーフコンシェルジュを務める傍ら、コンシェルジュの世界的組織レ・クレドールインターナショナルの国際正会員としても活躍されている阿部佳さんに、コンシェルジュとして日々心掛けていることなどについてお話を伺いました。

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「人の気持ちを読むという今まで見たことのない面白そうな仕事」

― コンシェルジュになろうと思ったきっかけは何ですか。

 中学生のとき、父のヨーロッパ出張に家族も一緒についていくことになりました。
 そのときに泊まった各ホテルのロビーでは、威厳のある男性が、テキパキと、でも優雅に、宿泊者の観光やビジネスの相談に乗ったり、各種チケットを手配したり、レストランの予約をしたりしていました。
 父が仕事をしている日中、母と私は観光に出かけるので、コンシェルジュに相談しました。すると、その日の私の気分や体調を察し、それに天候などにも配慮して、毎日ちがったスケジュールを組んでくれました。
 美術館でのんびり過ごすか、それとも動物園をアクティブに見てまわるか、その日その日で選んでくれた場所が、それぞれその時の気持ちとぴったりで、びっくりしたのを覚えています。
 ヨーロッパの老舗ホテルで出会った、こうしたコンシェルジュが、「人の気持ちを読む」という今までに見たことのない面白そうな仕事でしたので興味を持ちました。
 そのときの体験がコンシェルジュになろうと思った原点になっています。

 

「お客様と手配に係わった人みんながハッピーになれる喜び」

― コンシェルジュとして日々心掛けていることとは何でしょう。

 お客様からはいろいろな要望がありますが、無理難題を解決することだけがコンシェルジュの使命だとは思っていません。
 基本的な案内や手配でもただ伝えるのではなく、どう相手に伝えるかが重要になってきます。例えばレストランの予約1つとってみても、まずはお客様の欲していることをつかみ、最適なお店を選び、レストラン側にはお客様のご要望をしっかり伝える。そのことによりお客様には、よりおいしく、もっと楽しく感じていただけるのです。
 その結果、お客様はもとより手配に係わったみんながハッピーな気持ちになれるのです。
 コンシェルジュは、そのときのお客様の様子を見て、何を望んでおられるのか、何をして差し上げたら喜んでくださるのかを常に考えています。

 

「19世紀中頃、ヨーロッパに現れたコンシェルジュ」

― コンシェルジュの歴史を簡単に教えてください。

 コンシェルジュの原型は、中世ヨーロッパの旅籠みたいなところでお客様のお世話をする者や、貴族の屋敷で門番や、夕暮れになれば各部屋を回り、ローソクに火をともす者だったといろいろな説があり、定かではありません。
 フランス国王ルイ16世の王妃マリー・アントワネット(1755-1793)も幽閉されたコンシェルジュリー(かつて宮殿で、牢獄として14世紀後半から20世紀初頭まで使われていた)の扉には、ここに住んでいる人たちの世話をしている係りを「コンシェルジュ」と呼んだ、という明記があります。
 ホテルにコンシェルジュが現れたのは19世紀中頃のヨーロッパで、仕事はグランドホテルと呼ばれる大きなホテルの玄関でお客様をお迎えし、お部屋の鍵をお渡しすることでした。
 20世紀に入ると貴族をはじめとするVIPから頼まれるあらゆるリクエストに的確に応えることで、信頼を得て仕事の質と社会における地位が向上していきました。

 

「外の世界にも目を配り情報網を構築する」

― 外国と日本のコンシェルジュとでは何か違いはありますか。

 100年を超える歴史あるヨーロッパのコンシェルジュと、その職種が現れてからまだ30年足らずの日本とでは、歴史も力も全然違います。それが世間における認知度にも表れています。
 欧米のコンシェルジュは裁量も与えられており、仕事の幅も広いので、各業者は自分たちの商品やサービスの内容を知ってもらおうと演劇やコンサート、レストランなどに招待します。
 コンシェルジュは、招かれたレストランのサービスが良く味もおいしければ、お客様をどんどんご案内します。
 残念なことに、日本の社会ではコンシェルジュの役割や重要性がまだまだ知られていないので、業者さんたちは招待どころか、なかなか協力もしていただけません。
 コンシェルジュは劇場やレストランなどの情報をたくさん持っていれば、お客様の要望にも的確に応えることができます。
 今の日本では、コンシェルジュが積極的に、外の世界に興味を持ち、日ごろから劇場、レストラン、フラワーショップなどの関係者とも広く良い関係を築いておくことが肝心です。

 

「また来てもらうための最高のおもてなしを求めて」

― 今後の抱負をお聞かせ下さい。

 コンシェルジュとは、お客様の気持ちを読み取り、お客様の期待を超えたおもてなしをすることだと思っています。
 お客様には、素の自分ではなくそのホテルの一コンシェルジュとして接しなければなりません。そのためには、ホテルマンとしてプロの意識を持ち、常にその役柄を演じる必要があります。
 私は、お客様に”あの”コンシェルジュがいるグランド ハイアット 東京にまた泊まりに行きたいと言っていただけるようなおもてなしを心がけています。そして本当にまた来てくださったときに喜びを感じます。
 ホテルの国際的なサービスと日本旅館の女将が持つ伝統的な日本独特のおもてなしを融合させたような、日本ならではのコンシェルジュを確立し、その質を向上させ、世界にもアピールしていきたいと思っています。

 

レ・クレドール インターナショナル
Union Internationale des Concierges d’Hotels “Les Clefs d’Or”

1929
年、フランスで発足したホテルのコンシェルジュの世界的なネットワーク組織で、現在41カ国、約3,500名の会員によって構成されています。目的は会員の知恵や知識などを結集させることにより、ゲストへのサービスを向上させ、会員一人一人が優れたコンシェルジュに成長することを目指しています。また年1度の国際大会のほか、さまざまな会合を世界各地で開催し、コンシェルジュのための勉強会などを行っています。

阿部 圭 プロフィール

東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、(株)パルコに入社。(財)幼児開発協会の企画室に勤務。1992年ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルにコンシェルジュとして入社。1993年ヘッド・コンシェルジュに昇格後、1997年にコンシェルジュの世界的組織「レ・クレドール」の国際正会員となり、翌年「レ・クレドールジャパン」のプレジデントに任命。2002年からグランドハイアット東京にチーフコンシェルジュとして就任。著書に「わたしはコンシェルジュ」(講談社)がある。

協力 グランドハイアット東京
http://tokyo.grand.hyatt.jp


写真 君和田
富美夫、取材先提供

 

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