カプセルトイは、日本で独自の進化を遂げてきた。元々、1880年頃にアメリカに存在していたキャンディやガムの自動販売機が原型と言われている。それがガムボールマシンと呼ばれる機械に進化した。機械は改良され、キャンディやガムと一緒におまけも入るようになったが、当初、商品はカプセルに入っておらず、おまけはキャンディなどと一緒にまざっていていた。そのため、故障も多かったという。1956年にアメリカで衛生的で壊れにくいカプセルが開発され、カプセルトイが誕生した。当時のアメリカのメーカーは中に入れるおもちゃを作るために、ハイレベルの職人を日本や香港で探して依頼していたそうだ。
現地での人気を受け、日本には1965年にアメリカから輸入されて入ってきた。当時はほとんどが安価で軽量な子供向けのおもちゃだった。1970年代には日本全国に広がり、1970年代後半から1980年代にはスーパーカー消しゴムやキン肉マン消しゴムなどが一世を風靡(ふうび)した。中にはキャラクターによく似た(が本物とはちょっと違う)消しゴムや不思議な変身ロボットなどの少し怪しいおまけもあったが、それも含めて多くの子どもたちを引き付けてきた。
日本ではこれまでもアニメやマンガなど、外国では子ども向けと思われたものが質の高い新しい文化へと変わってきた。カプセルトイも、外国では子ども向けのそれほど高くないおもちゃというイメージがあるが、日本では1990年代以降は子供向けだけでなく、より精巧な、品質の高い大人向けの商品も企画され、作られるようになっていった。
2012年に、「コップのフチ子」というシリーズが発売された。これはコップのふちにさまざまなユニークなポーズで腰掛けたりひっかかったりする女の子のフィギュアで、シリーズ化され大ヒットとなった。のちに書籍が出版されたり、展覧会が開かれたりしたほどである。この頃から若者~大人向けの面白い、話題になりそうなものが次々と開発された。
日本は伝統的にもミニチュア化することに長(た)けている。古くは漆芸や金工などによって細密な技術をほどこした印籠や根付、お雛(ひな)様やその調度品、盆栽などがあり、新しいところではトランジスタラジオやウォークマン、プラモデルやフィギュアなどがある。フィギュアで有名な海洋堂が作るカプセルトイには仏像や日本の郷土玩具、恐竜、戦車などがあり、精巧なつくりで人気が高い。子どものおもちゃとして始まったカプセルトイも、今ではむしろ学生や大人がコレクター的に楽しんでいるように思われる。
2022年5月現在、特に流行しているものの例としては「いきもの大図鑑」シリーズや、猫のペンホルダー、押しボタン、またカプセル自体がフィギュアの一部になる商品などがある。また一つのジャンルとして、企業とコラボしたものなどにも人気がある。例えばレストランや食品メーカーとコラボした食品サンプルやアウトドアメーカーのキャンプ用品のミニチュアなどだ。新しい商品はどんどん開発され、一度売り切れてしまうと新しい商品に入れ替わってしまう。そのため、気に入ったものを見つけたらそこで購入しないと二度と出会えないかもしれない。一期一会だ。最近話題となった変わったカプセルトイには、赤の他人の証明写真、おじいちゃん・おばあちゃんからの手紙など、普通では考えつかないようなものもあり、こういったものが最近はSNSで話題となることも多い。また観光地限定、期間限定のものなどもあり、コレクターにも人気だ。