“阿蘇” 火山の恵み 第1部

2013-08-29

 

“阿蘇” 火山の恵み 第1部

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阿蘇カルデラ観光

阿蘇火山はおよそ27万年前の大噴火から活動を開始し、9万年前の大火砕流を伴う噴火により現在のカルデラが形成されたと言われている。阿蘇のカルデラはその独特の景観と気候・風土により年間約1750万人の観光客を惹き付けている。その魅力を体験するため、真夏の阿蘇を訪問した。


阿蘇のカルデラとは

阿蘇熊本空港から車で阿蘇市へ向かった。JR豊肥本線の阿蘇駅を目指して国道を走り市内に入ると、青々とした田んぼの彼方に阿蘇の火山群(五岳)が見えてくる。しかし初めて阿蘇を訪れる記者にとって、最も印象的だったのは国道の左側に延々と続く巨大な壁のような外輪山だった。「こんな均一な山並みは見たことがない」それが阿蘇の第一印象だった。
 外輪山は9万年前に阿蘇火山が大噴火したとき、土地が陥没したことによってできた
カルデラ*の縁に当る。阿蘇の地形は、この外輪山とそれに囲まれるカルデラ内の平地、そしてカルデラ中心部の阿蘇五岳(根子岳、高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳)の3つに大きく区分される。阿蘇カルデラの大きさは、東西18km、南北が25kmと世界でも有数の規模を誇り、カルデラ内の平地部分には約5万人の住民が生活している。
*カルデラ:火山の活動によってできた大きなくぼ地のこと。鍋や釜という意味のスペイン語に由来する。

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JR阿蘇駅

カルデラを囲む外輪山

 

気候と農業

 阿蘇の火山群は海抜600~1600m、外輪山は400~1200mであり、カルデラ内の平地部分でも400~600mあるため、九州でありながら高原地帯の涼しい気候である。訪問した8月上旬は非常に暑い時期だったが、それでも熊本市と比較すると数度気温が低かった。また年間降水量は3000mm前後と多く、熊本都市圏および近県の水源となっている。
 農業では夏冷涼で病害虫の発生が少ない自然条件と、豊富な草資源を活用した土づくりによる、減農薬・減化学肥料栽培が行われている。今回体験した阿蘇の夏は風にそよぐ緑の稲穂が美しく、また夏野菜がとても美味しかった。

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雨水を地下に湛える外輪山

平地部に広がる農地

 広大な草原を利用したあか牛*などの牛肉や馬肉、乳製品の生産も盛んである。
 阿蘇五岳や北部外輪山の草原にゆったりと草を食むあか牛の姿は、阿蘇草原地域の牧歌的雰囲気を代表するもので、その姿を目にするたびに車を止めて何度もシャッターを切った。

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草原に草を食むあか牛

*あか牛:くまもとあか牛。放牧に適し、肉質は赤身が多く適度の脂肪も含み、肉の柔らかさとヘルシーさを兼ね備えている。

 また今回の取材では北部外輪山上の草原をヘリコプターで上空から見ることができた。地上から見えるよりもはるかに広大な草原であることを体感し、阿蘇の自然における草原の存在感がますます大きくなるのを感じた。

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上空から見ると地形的特徴と雄大さが体感できる

 阿蘇の草原では少なくとも1000年以上前の平安時代から放牧が行われてきたという。森林化を防ぎ、なだらかで広大な草原を維持するため毎年3月に行われる野焼きは、春の風物詩となっている。

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野焼き

 

「地球の息吹を感じる」(中岳火口と周辺のジオサイト)

 大地を科学的に観察して、特別に重要で貴重な、あるいは美しい地質遺産が数多く点在する地域をジオパークと呼ぶ。阿蘇カルデラの内側および外輪山の外側斜面は、2009年に「日本ジオパーク」に認定された。また現在(2013年8月)「世界ジオパーク」としての認定を目指している。

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緑の草原と白煙煙る火口のコントラスト

 阿蘇ジオパークの中でも中心的存在である中岳は、有史以前から現在まで活発な火山活動を続ける日本有数の活火山である。中岳中央火口を目指して車を走らせた。
 牧草地のあか牛を眺めながら阿蘇パノラマラインを行くと、白い煙が立ち上る中岳火口の手前が広く開けている。草千里と呼ばれる草原で、ダイナミックな火山を背景に乗馬を楽しむ観光客に人気が高い。 

 中岳の火口へ上る方法はいろいろある。元気な人は遊歩道を歩くこともできるし、どうしても歩きたくなければ、有料道路で火口まで行くこともできる。それほど脚力に自信がない記者としては、往路はロープウェーで火口駅まで上がり、下りは遊歩道を歩いてみた。
 取材当日は快晴で、火山ガスの注意報・警報もなく火口見物ができた。火口駅を出ると直ぐに独特の硫黄臭がただよっている。展望指定区域から火口を容易にのぞくことができた。そこには白煙が立ち上る火口、エメラルドグリーンの湖のような「湯だまり」、そして独特の荒涼感を醸し出すむき出しになった地層など、他では見たことのない景観があった。

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年間100万人の観光客が訪れる中岳火口

 火口見物を終えて遊歩道を下って行くと、道すがら火口近くの荒涼とした景色を楽しめる。途中道をそれて砂千里と呼ばれる砂と岩だけの地域を歩いていると、オランダから来たという二人連れと出会った。感想を聞くと「火口がすごかった。もっと近づきたかったけど、危険なんだよね」と答えてくれた。
 素晴らしくユニークな観光地とはいえ、二酸化硫黄の火山ガスは常に放出されているため、喘息、気管支系疾患、心臓疾患の方は火口見物を禁止されている。またガスの濃度によっては健康な人も見物を規制されることがある。ここはあくまで実際に活動している火山なのだ。

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砂千里を歩くオランダからの観光客

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