2025年1月21日 / 最終更新日 : 2025年1月22日 ihcsacafe_user レストラン 神戸ビーフ専門店「ビフテキのカワムラ」で聞く和牛の王様「神戸ビーフ」とは? 神戸ビーフ専門店「ビフテキのカワムラ」で聞く和牛の王様「神戸ビーフ」とは? 印刷用PDF 世界中で日本の食への関心が高まる中、訪日外国人に日本に来たらぜひ食べたいものは?と聞けば、真っ先に挙がる食の一つに「和牛」がある。 和牛の中でも、海外では昔から「神戸ビーフ」が広く知られており、和牛イコール神戸ビーフ、と思っている外国人も少なくない。日本人はいろいろな和牛があることを知っているが、その中でも神戸ビーフは希少な「高嶺の花」のイメージだ。日常生活ではほとんどお目にかからない。神戸ビーフとは、いったいどんな肉なのだろうか? なぜそれほど特別なのか? 神戸に本店を置き、半世紀以上にわたり専門店として最上級の神戸ビーフを提供し続けている「ビフテキのカワムラ」。その銀座店で私は先日、生まれ初めて最上級の神戸ビーフを食べる幸運に恵まれ、「特別」を体験させていただいた。感動のあまり、ぜひ神戸ビーフのお話しを伺いたい!と再度銀座店を訪ねた。 ご対応くださった店長の山本浩之氏から最初に伝えられたのは、「神戸牛という牛はいないのです。」という驚きの真実。正式名称は「神戸肉(こうべにく)」、英語では「神戸ビーフ」であるが、もととなっている牛は「但馬牛」(たじまうし)という兵庫県産の牛なのだそう。この但馬牛が屠殺(とさつ)(山本店長は「命を頂く」と表現)された後、解体され、「枝肉」となる。枝肉とは、頭、尻尾、四肢、皮、内臓などを取り除いた骨付き肉で、この枝肉の状態で数々の審査を受け、一定の基準以上( A4もしくはB4の6番以上)と認められたら、「神戸ビーフ」と認定される。基準以下の枝肉は「但馬肉」として分類されるのだ。世間では、神戸近辺で生まれ育った神戸牛という牛がいる、と誤解されていることがあるようだが、実は生きている間は但馬牛なのである。山本店長は、来店されたお客様にはできるだけこの事実をお伝えするようにしている、とのこと。 さて、晴れて「神戸ビーフ」と評価された肉には、その証明である「神戸肉之証」という証文が付与され、肉には「のじぎく」と呼ばれる神戸ビーフの証である判が押される。 ビフテキのカワムラの壁一面にずらりと並ぶ証文は圧巻。額縁に入っているのが「黒毛和種子牛登記(くろげわしゅこうしとうき)」で、神戸ビーフになったそれぞれの但馬牛の「鼻紋」が押印されている。牛には指がないので、指紋の代わりとなるのが鼻紋なのだ。そして当該牛の名前、誕生日だけでなく、その家系図が記されている。父母牛、祖父母牛、さらに曾祖父母牛の情報までさかのぼれるようになっていて、但馬牛の血筋は何世代にも渡り厳密に管理されているのである。 肉に押されたのじぎくの判 神戸ビーフになった「あかねちゃん」の証文。左下にあるのがあかねちゃんの鼻紋 「血統」が重要 この厳正な血筋管理について山本店長は、神戸ビーフの品質において最も重要なファクターは「血統」だからです、と断言。 但馬牛は全て、厳密な管理下で行われる人工授精によってのみ誕生する。肉質の良い、選ばれた種牛からのみ精子を採取し、繁殖させるのだ。交配は但馬牛の間でのみ行われ、外国産牛や他府県の牛との交配は一切認められない。 日本で肉食が始まったのは江戸時代末期。開国により日本に滞在した西洋人の間で但馬牛がおいしいことが評判になる。そして、その高品質な肉質は血統で左右されることが判明した。それ以来、但馬牛は代々他品種との交配を避け、世界でもまれに見る純血統種となったのだ。 全ての但馬牛の素牛となる「選ばれし種牛」はわずか12頭。神戸肉流通推進協議会が厳しく管理している。年老いて引退する種牛もいるが、その際は「待機牛」の中から最も品質の良い牛が選ばれて、新たな種牛に昇進?する、というシステムだ。 神戸ビーフ: そのおいしさの特徴 これほどまでして守る血統によって作り出される神戸ビーフならではの肉質とは? そのおいしさの特徴について伺うと、山本店長は、脂と赤身肉のバランスと、脂のキレの良さを挙げた。神戸ビーフはそれほど脂が多くなく、霜降り肉でも赤身と脂肪の割合は半々くらい。そして脂肪の融点が低く、口の中にいれると脂がサッと溶けていく。そのため、あまり脂っぽさを感じず、重たくならないのだそう。 最優秀賞受賞 「チャンピオンビーフ」 このように血統管理されて、審査を通過した「神戸ビーフ」であっても、その肉質には幅があるものである。そこで、各種の神戸ビーフ品評会などが行われ、最優秀賞や優秀賞が選ばれている。 和牛の格付けではA4、A5といった表記をよく目にするが、その中でさらに1〜12番までのランク付けがされる。A4の7番あたりがスタンダードで、A5の8番以上になると、各品評会で賞を獲得するレベルになり、値段も一気に跳ね上がる。A5の12番が最高ランクである。12頭の種牛の中でも優劣があり、どの種牛から生まれた肉なのかもランキングに大きく影響する。 ビフテキのカワムラは、これら最優秀賞や優秀賞を受賞した神戸ビーフ、いわゆる「チャンピオンビーフ」を買い付けて、お客様に提供することで知られている。中でもメスのチャンピオンビーフは年間7〜8頭しか選ばれないため大変希少であるが、相当数を買い付けるようにしている。 ちなみに神戸ビーフはセリでしか買えない。契約農家からの直接買い付けはできず、肉のプロがそれぞれの品質を見て点数を付け、それを業者が公平公正に競り落とす。この平等なシステムにより、品質が安定して神戸ビーフブランドが守られることとなり、生産農家も不当な買い叩きをされることなく守られている。 さて、知れば知るほど神戸ビーフを食べたくなってきた。山本店長に最後の質問。ロースとフィレ、どちらがオススメ? 店長の答えは「ロース」。フィレの柔らかさは人気だが、神戸ビーフの脂の甘みや他の和牛との味の違いが分かりやすいのはロース。牛肉にはいろいろな食べ方があるが、神戸ビーフはステーキで食べるのに向いているようだ。脂と赤身が口の中で一体化していく感覚、「マリアージュ」を楽しんでいただきたい、とのことであった。 ビフテキのカワムラ銀座店の現在の店舗での営業は2025年の1月12日まで。その後、近くのビルに移転し、同年4月中旬に新店舗での営業を開始する予定。2フロアに拡張し、席数も増えるので、銀座で最上質の神戸ビーフを食べたくなったら、ぜひ訪れてみてほしい。 <取材協力> ビフテキのカワムラ銀座店 移転後の新店舗: 東京都中央区銀座6丁目5-6 銀座美術館ビル10階〜11階 メニュー (神戸ビーフのステーキコースがメイン) 神戸ビーフステーキコース: ランチ¥19,800〜 ディナー¥22,000〜 最優秀賞(チャンピオン)受賞神戸ビーフステーキコース: ランチ¥38,500〜 ディナー: ¥44,000〜 コースには、前菜、スープ、焼き野菜、サラダ、デザートなどが付く。 記載のメニュー、値段は2024年12月現在のもの。 肉の在庫は入荷状況によるため、事前に店舗へ問い合わせることをお勧めする。 ホームページ 日本語:https://www.bifteck.co.jp https://www.bifteck.co.jp/menu/tokyo/course_ginza.html 英語:https://www.bifteck.co.jp/en/ English Page →