およそ620年前に「能」という演劇形式を確立した世阿弥は、1400年に「能」の理論書として『風姿花伝』を著わしました。そのなかで、能の修行法・心得・演技論・演出論を記していますが、「秘すれば花なり」(If you keep it secret, it will be a flower.)に代表されるように抽象的な表現が多く、今では哲学的な芸術論として、また日本文化特有の精神論として、様々な解説書が出版されています。
また、彼が創作し今も演じ続けられている“現行曲”は、およそ250曲あります。
それらはシテ(主役)の役によって「神」「男」「女」「狂」「鬼」の5つのジャンルに分けられます。昔は1回の催しで、すべてが順に1演目ずつ演じられ、途中、緊張をほぐすためにコミカルな「狂言」が演じられました。