外国人に喜ばれるおもてなしと木更津の楽しみ方

明治30年創業「味処 宝家」美人若女将鈴木希依子さんが語る
外国人に喜ばれるおもてなしと木更津の楽しみ方

東京湾アクアラインの開通によりさらなる発展を続ける木更津は、かつて料亭や芸者置屋(芸者などを抱え、客の求めに応じて料亭などに差し向けるお店)が軒を連ね、最盛期には艶やかな着物を着た芸者が約200人もいた花街だった。今でも芸者のお稽古場として使われている「木更津会館」では芸者たちが日々踊りや三味線の練習を重ねている。
女将業の傍らラジオ局bayfm78等でパーソナリティとしても活躍している鈴木希依子(すずききえこ)さんに木更津の楽しみ方や、外国人客に人気のある「味処(あじどころ) 宝家(たからや)」の取組みについてお話を伺いました。

鈴木希依子さん

女優業も女将業もエンターテイナー
―米国生活8年間とお聞きしていますが何をされていたのでしょうか?

 14歳のときに単身アメリカに渡り、高校生活4年間は海外で過ごしました(米国の高校は4年制)。その後、南カリフォルニア大学に進学し、途中休学をして日本で女優をしていましたが、またアメリカに戻り大学に通いながら、演劇学校のアクターズ・スタジオ・ロサンゼルス校でレスッンを受けていました。その当時、アメリカではアジア人といえばアクションでしたので、カンフー映画なんかのオーディションに行ったり、映画の他にテレビの撮影に参加していました。
 日本では、映画「岸和田少年愚連隊カオルちゃん最強伝説(2001年)」でヒロインに抜擢されたり、テレビドラマ「相棒」などに出演していました。
 若いころのアメリカ生活と、この女優業が今の女将業にいろいろな場面で役立っています。女優業は、舞台と映画で変わってくるのですが、その両方に共通しているのはどちらも現場での瞬間が勝負で瞬発力がとても重要になります。女優ってその場の主役というイメージがありますが、与えられた役割を演じるコマなんですね。自分の中で何か演技プランを考えていたとしても、それがハマルこともあれば、相手の俳優さんとの呼吸や監督さんの指示で全然違う表現になったりするんです。お店もある種生ものなので、そのときの状況に合わせて臨機応変に対応するというのが必要で女将業にも通じることがあります。

女優デビューしたての頃

海外で知り合った友だちは人生の財産
―海外留学の動機と米国生活で特に印象に残っている出来事は何ですか?

 母が一流のものを見る目を養いなさいと言って、子供の頃からお芝居を見に木更津から東京の劇場に連れて行ってくれたり、京都にある有形文化財のお家で昼食をいただく体験ツアーなどにも行ったりしていました。それらの経験と元々好奇心が強いことから、もっと広い世界を見てみたいと思い、留学することになりました。
 高校生活4年間の内2年間、コロラド州にある寄宿制の学校で学びました。そこは自然がいっぱいで、乗馬をしながらピクニックに行ったりしたのですが、その時に見た森や山の景色はとても綺麗で忘れられないですね。目がとても良くなりましたね(笑)。
 空の色が違うんですよ。冬になると雪が積もるのですが、夜、空を見上げると暗くなくて紫色なんです。たぶん、雪に月明かりが反射してそういう色になるのだと思いますけど、とても幻想的で忘れられないワンシーンですね。
 アメリカは人種のるつぼなので、文化の違う様々な国の人たちと触れ合うことができました。そして、今では、そこで知りあったいろんな国の友だちが、私の一番の財産となっています。

高校時代を過ごしたキャンパス 米国コロラド州

世界の人が仲良く楽しめる場所を作りたい
―宝家さんでは、どうして外国人のお客様を積極的に受け入れているのですか?

 海外留学の後も仕事やプライベートでいろいろな国に行くと、人種や宗教の違いから生じる誤解やトラブルを目にするようになりました。そんなことから、人種や宗教の垣根を越えていろんな国の人が楽しめる所があればいいなと昔から思っていました。そこで、家業の宝家がその場所を担っていければと思うようになりました。今は女優業の比重を減らし、パーソナリティとして地元の宣伝になるような番組に関わらせていただきながら、若女将としてお店に立っています。

重要なのは行動を起こすこと
―外国人に来ていただくためにどのような取り組みをされていますか?

 千葉県が行っている海外プロモーション事業に参加したりしています。今年の2 月には森田健作千葉県知事のタイにおけるトップセールスに参加してきました。現地の旅行会社の方々には、「宝家」のことだけをアピールするのではなく、木更津そして近隣の市や町の観光名所などもご紹介しています。これからはさまざまな形での連携をしていくことが重要だと考えています。
 行動を起こした距離だけ経験も増えると感じています。行動を起こして得たものは、将来のふとした瞬間に身を助けてくれるというか役立つと思っています。

タイで行われた千葉県のプロモーション

宝物は地元の食と伝統文化
―宝家さんには、日本人はリピーター、外国人からは良い口コミが多いようですが、何をされているのですか?

 木更津には、東京湾最大級の盤州干潟(ばんずひがた)があり、3 月中旬から初夏まで潮干狩りで賑わっています。宝家では、木更津名産のアサリや、近場で獲れる新鮮な魚介類、そして千葉県産のお野菜を中心にご提供しております。
 その味を楽しみにまた来てくださる方が多いようです。日本の方には、宝家名物の「あさり膳」が一番人気です。

金田海岸の潮干狩り

 イスラム教徒の方が来店しても対応できるように、ハラル食材を使用したムスリムフレンドリーのお料理をご提供しております。
 4 月には、駐日インドネシ大使館の方が自国から訪日されたお客様をたくさん連れて来てくださりました。他にも、木更津の写真館「写楽館」さんで借りた素敵なお着物をお召しになった方達などもお越しくださいました。皆さま笑顔がとても素敵で、カメラを向けると急に恥ずかしがる子供の姿がとても可愛らしく印象的でした。 また、ベジタリアンの方には、野菜と豆腐の鍋料理などをお出ししていますが、好評をいただいております。

インドネシアのお客様

 先日、外国人の団体をお迎えしたときには、すき焼きと共に木更津芸者さん達の踊りや歌をお楽しみいただきました。昔から続いている木更津芸者は木更津の宝だと思っています。
 やはり、外国の方は、ショーを見ながら食事をされるのが大好きですね。宝家では日本文化を五感で堪能していただくために、料理やおもてなしに気を配り、常に新しいことにチャレンジしています。
 このような対応ができるのは、やはり若いときの海外留学でいろんな国の人たちと知り合い、さまざまな文化に触れられたことが大きいと思っています。

木更津芸者さんのお座敷芸

木更津で結婚式を
―木更津のこれからと楽しみ方について教えてください?

 今、木更津では次世代に続く街作りをコンセプトに掲げ、オーガニックに力を入れています。野菜等の食材だけでなく、環境に優しく、人が健康で豊かに生きていくための持続可能な街作りをしています。木更津ではこの取組をオーガニックな街作りと呼んでいます。
 木更津の楽しみ方としては、まだ計画段階なんですけど、インバウンド向けには、結婚10周年とかの節目に、木更津で結婚式を挙げていただくプランを考えています。

写真館「写楽館」での挙式

 1,000着を超える着物を有する写真館「写楽館」で花嫁衣裳の打掛を着ての記念撮影をした後に、由緒ある「八剱八幡神社(やつるぎはちまんじんじゃ)」で結婚式を挙げてから、宝家でお祝いの料理を楽しんでいただくという流れです。これは木更津観光協会も関わっていて、記念の結婚証明書も発行予定です。また、結婚式プランのような大がかりなものではなく、写楽館さんで振袖や袴を借りて写真を撮った後に神社に行くなど、気軽に街歩きを楽しんでもらうのも良いかなと思っています。

木更津芸者のホープ、若葉さんと

地域貢献をしていきたい
―最後、鈴木さんの今後の抱負をお聞かせください?

 今、宝家には、さまざまな宗教や文化を持った国の人が来て料理や日本文化を楽しんでくださっています。これからは、宝家をここまで育ててくれた木更津さらには千葉県のためにも食材が豊富で自然豊かな房総半島の魅力をもっともっと国内外に発信していきたいと思っています。

<鈴木希依子さんプロフィール>
千葉県木更津市生まれ。8年間の米国留学中に芸能活動を開始し、「岸和田少年愚連隊」のヒロイン で映画デビュー、その後ドラマ「相棒」等に出演。8年前から家業の「味処宝家」で若女将を務める傍ら、 ラジオ局 bayfm78やケーブルテレビ J:COMチャンネル木更津でメディアパーソナリティとして活躍している。
 
<味処 宝家>
住所:〒292—0831千葉県木更津市中央2−3−4
TEL:438−22−3765
平日:11:30〜14:00/17:00〜22:00(ラストオーダー20:25)
日・祝日:11:30〜14:30/17:00〜21:00(ラストオーダー20:00)
定休日:第一・第三水曜日
http://takaraya.awk.jp

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