名刀といえば「正宗」。これは私が幼い頃からの印象である。つまり「正宗」とは子どもまでその名を知る有名な刀だった。そしてそれは刀を作った名刀工の名でもあった。近年仕事で日本文化に接することが多くなり、鎌倉で700年の伝統を守る正宗24代目山村綱廣(つなひろ)先生にお会いする機会も得て、ふっと素朴な疑問が湧いて来るようになった。正宗はなぜ名刀なのか? いろいろ資料を読み、山村先生のお話を伺っても、刀剣の世界はあまりにも奥が深く、素人の私にはその謎が解ける訳ではない。以下は私自身の作刀に関する無知、あるいは生没年が不詳であるなど謎が多い刀工達の生涯を推し量る難解さ、などを差し引いた上で、正解ではないが1つの考え方としてお読みいただければありがたい。