さてこの地域では、厳しい寒さに耐え、温泉でカラダを癒すのは人間だけではない。
山ノ内町の人里離れた山奥に、地獄谷野猿公苑(Wild Snow Monkey Park)という野生のニホンザルを自然に近い状態で観察できる施設がある。ここに集まるニホンザルは、半径数キロほどの山の中で自然の営みをしているが、施設が計画的に与えているエサを求めて毎日野猿公苑にやってくる。1964年の開苑以来大切に保護されているため、サルたちは人間を恐れていない。従って、入苑者がサルの目をじっと見つめる、サルに触る、脅かす、勝手にエサをやるなどの違反行為をしない限り、サルが人に敵対行為をすることはない。そのため興味深い野生のニホンザルの生態を間近で観察できる場所として、研究者や写真家だけでなく、世界中からの観光客が毎年大勢訪れている。
特に冬場は、苑内に作られた天然温泉の風呂場で、雪の綿帽子をかぶりながらサルが温泉に入って寒さをしのぐ。その様子が可愛らしく、癒されるとして、世界中から多くの外国人観光客が集まる。極寒の中、駐車場から片道30分ほどの雪道を、ぞろぞろと歩いて野猿公苑に向かう外国人観光客の行列を見て、温泉に入る「スノーモンキー」たちがいかに人気であるかがよく分かった。