雪見風呂の愉しみ方 雪国観光圏で雪見温泉

温泉エッセイストの山崎まゆみさんに、雪の中での温泉とその楽しみ方などを紹介してもらいました。

 雪国の温泉宿は、よく文学の舞台になります。

 大粒の“牡丹雪”が降り積もる「ぼそっぼそっ」と雪が重なりあう音、湿った重たい“水雪”は「ずしんずしん」という響くような音、さらさらな軽い雪は舞うようにリズミカルな音が、雪には様々な音が聞こえてきます。

 雪はそれ自体で音を奏でますが、人工的な街の音すべてをのみこんでしまうのも雪の力です。ですから雪国には静寂な世界が広がり、湯けむりあがる温泉に浸かるという行為が文学を生み出すのかもしれません。雪と温泉の世界を表現したものにノーベル文学賞を受賞した作家川端康成の『雪国』がありますが、他にも多数あります。なかでも、渡辺淳一さんの『かりそめ』は私の好きな作品で、雪深い温泉宿を舞台にしたものです。

六日町温泉 龍言

 『かりそめ』では、悲恋に終わる熟年の男女が旅先に選んだ場所として、新潟県六日町温泉龍言(りゅうごん)が出てきます。龍言は、物語の世界ではなく、現存する宿。かなりの人気宿で、特に近年は外国人観光客からが「日本を感じることができる」と大人気です。

 龍言は古民家を移築して宿にしています。道路沿いにある堂々たる門をくぐると、その先にずっしりとした面持ちの日本家屋があります。玄関に入ると、豪雪地帯ならではの重たい雪に負けない太い梁や柱が見事なほど。ロビーには囲炉裏があり、ここでお茶と菓子で一服。それから客室に案内されます。

ずっしりとした面持ちの日本家屋

ロビーの囲炉裏

 六日町温泉は昭和32年に天然ガスの掘削作業中に湧き出した温泉です。ガスを掘っていたら、温かい温泉が出てきたというもの。その湯は、さらさらで、両手で温泉をすくい上げると、すっと持ち上がり、湯を眺めると透明感抜群。見ているだけで、心まで洗い流されてしまいそうな、そんな綺麗な温泉なのです。

 龍言では、簡易な囲いをした野天風呂で、雪景色を眺めながら温泉に入ることができます。温泉に浸かっている胸から下はほかほかで、出ている部分はきーんと冷える。日本語で「頭寒足熱」ということわざもありますが、頭が冷えていて、足をあたためている状態は体にもいいですし、湯あたりしにくい。何時間でも、雪景色を眺めていたくなります 。

 さて、雪見温泉といえば、雪国をテーマとした「雪国観光圏」(新潟県南部の魚沼地域及び群馬県、長野県の県境を接する地域「魚沼市、南魚沼市、湯沢町、十日町市、津南町、みなかみ町、栄村」の7市町村を圏域)にある温泉地が雪見温泉にはいいでしょうね。例えば、新潟県六日町温泉、越後湯沢温泉、そして群馬県みなかみ温泉郷などです。

 雪国観光圏は、なぜ、雪国をテーマとしているか。それはこのエリアならではだからです。日本海からの湿った空気が越後連山に当たり、山沿いに雪が降り積もる。このエリアは豪雪地帯なのです。その豪雪地帯に人が暮らす様子も外国の方にはご覧になって頂きたく、今回、古民家を移築して宿にしてある龍言を紹介しました。

上越線 六日町駅

 ちょうど上越線という群馬県みなかみ駅から新潟県長岡駅までのローカル線があります。龍言のある六日町温泉も、上越線六日町駅が最寄りです。ローカル線で日本の豪雪地帯を旅して、雪見温泉を愉しむ。日本の文学を感じることのできる雪国観光圏に、この冬、いらっしゃいませんか。

温泉旅館(旅)への持ち物

 わたしの湯めぐりの相棒は日本手ぬぐいです。いつも2本持ち歩きます。一日に何湯も巡るのですが、湯から上がり1本使い、次の場所で1本。軽くて、コンパクト。持ち運び便利なうえに渇きも早い手ぬぐいが便利なのです。
実は、江戸時代から手ぬぐいが愛用されてきました。錦絵などを見ると、男女ともに湯からあがると首から手ぬぐいをかけているんですよ。

入浴前の準備も忘れずに

 温泉入浴は癒されるものですが、思っている以上にカロリーを消費します。42度の湯に5分浸かると、10分ほど早歩きした時の消費カロリーと同等と言われるほどです。空腹だと湯あたりしてしまいます。かといって、満腹すぎても苦しくなってしまいます。ですから空腹過ぎず、満腹過ぎずというのが鉄則。
入浴前はチョコレートなど簡単にカロリー摂取できるのでおすすめします。
旅館の客室に置かれている「温泉まんじゅうとお茶」これは理にかなっているものなのですよ。

日本流の入浴のマナー

 外国の方にもぜひ日本流の入浴をマスターしていただきたいですね。
大浴場に入ると脱衣所があります。ここで服を脱ぎ、ロッカーか籠に洋服を入れてください。そして特に女性の場合は髪もまとめてください。日本では湯船に髪の毛が入ることは不潔とされています。
タオルか手ぬぐいを持ち、大浴場へ。
シャワーブースがあれば、そこで身体をよく洗ってください。シャワーがない場合は、湯船から桶でお湯をすくい、身体を洗ってください。
体を洗ってから、湯船の温泉へ。
充分に温まったら、またシャワーブースで、今度は髪を洗ったり、身体を洗ったり。
再度、温泉に入り、持参したタオルで身体を拭いて、脱衣所へ。

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