進化と深化 『ギア』では観客へのアンケートを大切にしている。上演後周りを見わたすと大多数の観客がアンケートに熱心に回答している。アンケートの回収率は平均約80%で97%以上が面白かったと答えている。劇場のキャパシティーは72人。大きな劇場と違って舞台までの距離が近く、キャストとの(ノンバーバルな)コミュニケーションも多いので、自然に自分が感じたことを伝えたくなるのかも知れない。また、その気持ちを受け取った『ギア』のキャストやスタッフも、観客からのフィードバックをできるだけ次の公演に生かそうとしている。 『ギア』の演出家の名前はオン・キャクヨウ (On Kyakuyou)で、漢字で書けば「御客様」である。実は演出家はおらず「お客さま」のフィードバックを参考にしながらキャスト、テクニカルスタッフ、舞台スタッフ、時には制作やフロア(接客)スタッフまで参加して改善に取り組んでいる。毎回上演後にフィードバックミーティングを行い、撮影しておいた公演の動画とお客さまのアンケートを参照しながら、改善点を話し合う。今回私もフィードバックミーティングに参加させてもらうと、ダンスシーンの動画を見ながら「ここもっと熱量が欲しい!」とか、工場が暴走するきっかけとなるシーンで、「例えば、これが床に落ちて動くとか……マジックの方でどうにかできない?」と誰かが言う。とマジシャンが(関西弁で)「出来へん!!」とすかさず笑いながら突っ込みを入れた。公演の動画とミーティングの動画は、その場にいる人だけでなく全キャスト・スタッフで毎公演共有している。驚くことに、4500回を超えた今でもだ。