〜渋谷の真ん中で88年〜 老舗フルーツパーラーで楽しむ、美しい日本品質 渋谷西村總本店/渋谷西村フルーツパーラー

〜渋谷の真ん中で88年〜
老舗フルーツパーラーで楽しむ、美しい日本品質
渋谷西村總本店/渋谷西村フルーツパーラー

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 日本は四季折々、おいしい果物で溢(あふ)れている。その果物を、ため息が出るほど美しくアレンジしたデザートを楽しめる喫茶店が「フルーツパーラー」。実は「フルーツパーラー」とは、「fruit」と、談話室や憩いの場を意味する「parlor」を組み合わせた和製英語で、果物をメインに、アイスクリームや生クリームなどを組み合わせたデザートを提供する喫茶店として百十数年ほど前に東京で誕生した。

現在の渋谷西村フルーツ1階部分
戦後復興時の店構え

 「渋谷西村フルーツパーラー」があるのは、訪日観光客や若者でいつも大賑わいの渋谷ハチ公前スクランブル交差点すぐ目の前。創業1910年の老舗高級果物店、西村果実店が1935年に現在の地に店を出し、その2階にフルーツパーラーを開業したのは1936年のこと。以来、90年近くにわたり、渋谷の真ん中で、美味(おい)しく美しいフルーツデザートを提供し続けている。

代表取締役専務 西村元孝氏。フルーツ店の店頭にて

 渋谷西村總本店専務の西村元孝(もとたか)氏によると、西村が渋谷に出店した当時は、東横百貨店が駅前に誕生したばかり。あの伝説の犬「ハチ公」が毎日渋谷駅に現れていた頃だ。西村氏の祖母はハチ公にエサをあげることもあったという。

 まだ繁華街として発展するのか否か不確実な渋谷の将来性を信じて、その中心にフルーツパーラーを開業したのが、創業者である西村正次郎氏。まさに先見の明があったと言えよう。その後、第二次世界大戦の空襲で渋谷は焼け野原になったが、街の復興とともに渋谷西村總本店も再建。今も人気メニューであるホットケーキには、昭和の時代から続くオリジナル配合の粉を使用している。伝統のレシピの1つだ。

「オリジナルレシピのホットケーキ」


 熱伝導の良い特注の銅板プレートで1枚ずつ丁寧に焼き上げる。季節により旬のフルーツや自家製フルーツソースを変化させてトッピングした季節のホットケーキも提供している。

 若者の街として発展を続けた渋谷で、渋谷西村フルーツパーラーは、デートスポットとして、また、カジュアルなお見合いの場としても人気になった。そして近年では、スクランブル交差点とハチ公像を目当てに渋谷を訪れる外国人観光客を、高品質の果物とフルーツデザートで魅了している。
 西村氏は、国産果物が、確実に、日本を代表する食文化の一角を成すようになったことを実感する、と語る。国産果物は単に甘さだけでなく、芳香やみずみずしさ、果肉の食感にまでこだわって育てられ、安全安心の高品質や見た目の美しさも備わった、海外ではなかなか得られない希少価値も魅力なのであろう。
 なぜ国産果物は高品質なのか。西村氏は、日本におけるフルーツの位置付けが、そもそも単に「食べ物」というだけでなく、「嗜好品(しこうひん)」として扱われてきたことにある、と指摘。「嗜好品」ゆえに、日本では昔から果物はギフトとして珍重され、「水菓子」とも呼ばれるデザートになった。そのため、より高品質であることが追求され、そこからさらに進化し、多様な品種が作られるようになった。

白イチゴを使用した「特選まりひめ&初恋の香りパフェ」

 最も人気がある国産果物の1つ、イチゴは、品種改良を重ね、次々と新しい品種が登場。「初恋の香り」のように完熟すると白くなるイチゴも誕生した。

 

 「あまおう」は、国産いちごの代表品種。繊細な温度調整など、丹精込めた栽培方法で作られる。

「マスクメロンとシャインマスカットのギフト」

 マスクメロンは国産果物の王様として扱われる。一つずつの マスクメロンには食べ頃になる日付けが記してある。
 シャインマスカットは、種子が無く、皮を剥(む)かずにそのまま食べられ、甘く美味しい人気の品種。本来の旬は9〜10月だが、貯蔵技術と設備の進化により、今では年明けまで美味しく食べられるようになった。これらのフルーツが化粧箱やバスケットに入れられ、きれいにラッピングされてギフト商品として提供されるのも、日本ならではの文化である。

「紅秀峰(べにしゅうほう)」

 初夏が旬のさくらんぼ。化粧箱に一粒ずつ丁寧に詰められているのは日本でしか見られないカタチ。

 近年、国産果物の苗が海外に流出して問題になるケースがあるが、たとえ同じ苗であっても、栽培方法がしっかりしていないと高品質で美味しい果物には育たない、と西村氏。日本には伝統的に手間をかけてモノを作ること、繊細な作業を行うこと、を良しとする文化がある。それが日本品質につながり、果物栽培においてもその精神が生かされている。また、流通、小売の業者も、生産者が丹精込めて作る果物を、一つ一つクッションに入れるなど、大切に扱う努力を惜しまないことで、高品質のまま消費者に届けられるのである

 さて、その高品質でおいしい国産果物を最高のカタチで味わうなら、やはり「フルーツパーラー」である。西村氏に人気メニューとその魅力をご紹介いただいた。

 フルーツデザートでまず大切なのは、果物の組み合わせ。お酒と食事のように、果物同士の「マリアージュ」がポイントなのだそう。例えば、コクのある果物は、酸味の強い果物と合わせることで、クセが和らぐ。そして良質な生クリームや、パフェ用に甘さを調整しているオリジナルのジェラートなどと果物の組み合わせも、味覚の妙となる。
 カットも重要なポイント。それぞれの果物によって、美味しいカットの仕方があり、カット方法によって風味や香りも変化する。カットしたての香りが最高なので、ぜひ新鮮な香りも楽しんでほしい。
 さらに、「フルーツの食べ頃」も大切である。鮮度が一番の果物もあるが、メロン、洋梨、マンゴー、パパイヤ、バナナなど、また一部の柿や桃等々は、調理スタッフが仕入れ後のフルーツを追熟させ、それぞれ一番食べ頃になったのをプロが見極めてカットし提供する物もある。

カットが美しい「マチェドニア」


 イタリア風フルーツポンチの「マチェドニア」をアレンジしたオリジナルデザート。マダガスカル産バニラビーンズを使用した白ワイン風味のフルーツシロップに新鮮な季節の果物を入れて、ふわふわのエスプーマ生クリームをトッピング。

 

「プリン ア ラ モード」


 季節により使用する果物やジェラートの種類、フルーツソースが変わる。プリンは、フルーツパーラー専用に自社製菓工場で製造。卵の風味が感じられるオーソドックスなプリンが果物と好相性。

 

「アップルマンゴー&苺パフェ」


 宮崎県産の高級品種が人気のマンゴーだが、近年は、北の大地、北海道でも栽培できるようになった。地熱と、冬に貯蔵した雪からの冷気を利用し、電気・ガスをほとんど使用しないエコな栽培方法で、高品質マンゴーを生産している。

 

 旬の果物を中心に西村のメニューは年7回変更されるが、それに加えて、さらに短い期間しか食べられない果物もあるので、「今だけ!」のメニューも次々と登場する。来店するたびに違うフルーツメニューが楽しめるのがフルーツパーラーの醍醐味(だいごみ)。

「紅まどんな&苺パフェ」

 

 「紅まどんな」は約1カ月間しか提供できない国産高級柑橘(かんきつ)。期間限定の幻のパフェ?

 品種改良によりさらなる進化を続ける国産果物。生産技術、保存技術がどんどん進歩し、品質の向上だけでなく、より長い期間楽しめるようになった。しかし本来、果物の「旬」は限られた期間であり、四季折々、次々と旬のモノが出てくるのが日本の果物の良いところ。あまりにも長い期間、ずっと同じ果物を食べられるようになったら、かえって面白くないのでは、と言う西村氏。

老舗果物店の伝統を繋ぐ西村氏からのメッセージ:
「それぞれの果物には1番おいしい時期があるので、四季のある日本で、ぜひ、「旬」を逃さずに最高の状態の果物を味わっていただきたい!」

 

<取材協力>
株式会社渋谷西村總本店
https://snfruits.com/
住所 〒150-0042
東京都渋谷区宇田川町22番2号
TEL: 03-3463-1001 FAX:  03-3463-1007

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