2026年6月16日 / 最終更新日時 : 2026年6月17日 ihcsacafe_user 伝統 大館曲げわっぱ 木の国日本の受け継がれる技と暮らしの美 大館曲げわっぱ 木の国日本の受け継がれる技と暮らしの美 印刷用PDF お弁当生活4年目。まだまだ新人。おいしいお弁当、特にさめてもふっくらご飯を模索中。そんな中、曲げわっぱへのあこがれが日に日に増していく。そして秋田県大館市(おおだてし)で作られている有限会社柴田慶信(しばたよしのぶ)商店の白木の曲げわっぱに巡り合った。白木で木目が細かく、軽い。その潔い美しさに一目ぼれ。曲げわっぱにはひとつとして同じものはない。木目、色が微妙に異なる。 世界で一つだけのわたしの曲げわっぱがほしい! 今回、あこがれの曲げわっぱのふるさと秋田県大館市を訪れた。飛行機からみた秋田の森は針葉樹の杉と山桜をはじめとする広葉樹がパッチワークのようだ。長い年月をかけ厳しい自然を生き抜いてバランスのよい美しい森に成長したという。国土の7割を森が占める日本で、自然を慈しみ、木で道具を作ってきた職人の技術から生まれた曲げわっぱは、森からの珠玉の贈り物である。 大館で有限会社柴田慶信商店の代表取締役、柴田昌正(しばたよしまさ)氏に話をうかがった。 柴田昌正代表ご夫妻 昌正氏作品 BON(盆) 「曲げわっぱ」とは 主に針葉樹、特に日本では杉をうすい板に削り、曲げて作る容器。これを「曲げもの」という。「わっぱ」とは輪のかたちをしたものさす。このような木工細工は日本の他の地方、そして世界にも存在する。 ノルウェーの木箱 アメリカのシェーカー教徒が使用した糸入れ しかし大館曲げわっぱは、国内で唯一「伝統的工芸品」に指定されている。 曲げわっぱ自体の歴史は古く、約二千年前から使われてきたとされる。 かつて山仕事に従事する木こりや、漁に出る漁師たちは、「一升わっぱ」と呼ばれる大きな弁当箱を用いていた。身と蓋の両方に炊きたてのご飯をぎっしり詰め、一升もの飯が入ることからそう呼ばれ、朝早くから働く人々が二食分の食事を持ち運ぶための生活道具であった。 柴田慶信商店の「木こり弁当箱」は、その伝統的な形をもとに、現代の暮らしに合うよう小ぶりに作り替えたものである。内部にはおかず入れを設け、使いやすさを工夫しながらも、昔ながらの意匠と精神を残すため「木こり弁当箱」と名付けたのが創業者・柴田慶信である。 伝統的にお盆、せいろ、おひつなど様々な曲げわっぱが作られてきた。 おひつ お盆 柴田慶信商店の曲げわっぱは、白木(無塗装)仕上げのため、お弁当箱はご飯の余分な水分を程よく吸収し抗菌効果があり、杉のほのかな香りがご飯のおいしさを引き立てる。 またパン皿はトースト後に出る湿気を吸収しトーストをおいしく仕上げる。 白木のお弁当箱 パン皿 「曲げわっぱ」ができるまで木の見極め 雪に耐えゆっくり育つと年輪の幅がつまり曲げ物にむいた杉が育つ。しかし、2013年、天然の秋田杉を守るため伐採が禁止された。以後奥羽山脈の他の地域から良い杉を見つけるのが、木材がいのちの曲げわっぱにとって必須条件となった。 木材を見極める 良い木材を蓄える リユース、リサイクル 板にする 器のサイズにより板の厚さを替えて削ってゆく。自然の木には一本一本個性がある。木に向き合い削り出す。製品になった時の厚みは3、4ミリになるように仕上げる。板の両端は組み立てた時に重なるため、木材の厚みと同じようになるように薄く削りだす。 曲げる 煮沸槽に水をはり、木材を一晩つけて水を吸わせ80℃に温める。やわらかくなったところでゴロという道具に巻いて丸める。 煮沸槽 ゴロに板を巻きつけ曲げる 木ばさみで固定 乾かす 乾いて曲げ癖がつくまで木ばさみでとめ7~10日乾かす。一度曲げたらくせは直らないので最初の曲げが肝心。時には曲がりたくない木もあるので、木の機嫌を聞きながら(木の性質を見極めながら)。 乾燥室 乾燥を待つ 伝統的万能木ばさみ 組み立てる ぴったりと削りだされた底板をはめる。接着する。 底板をはめる 轆轤(ろくろ):丸物を仕上げる時に使用 整える 紙やすり、轆轤でていねいに磨く。 樺とじ やわらかい年輪の場所を見つけ穴をあけ、山桜の木皮でとめる。現在は飾りの意味が大きい。山桜の木皮をつやつや、極薄に仕上げるのは難しい。材料は今も昌正代表が自ら山に入り良い材料を調達している。デザイン性も兼ね備えた3種類の山桜の縫い目模様は、古い曲げ物に学んだ慶信氏が考案して以来大切に受け継がれえている。 年輪を見極め穴をあける 山桜の木皮 樺とじ用に薄く削る どの工程もすべて人の目と手による。技と感覚。精密でていねい。木との真剣勝負だ。職人さんたちは一定の期間一つの工程に従事し、それぞれの工程の技を磨き曲げわっぱ名人になるべく日々精進している。 「柴田慶信商店」 柴田慶信会長は1964年、林業から転身、柴田慶信氏は独学で曲げわっぱの製造を学び、1966年創業。1979年、曲げわっぱ協同組合の理事となり、材料の確保、環境の整備、資料の作成に奔走。この努力により1980年「大館曲げわっぱ」が国の伝統的工芸品になった。慶信氏は国内外で実演を行い、講演会、展覧会も企画。国内外の曲げわっぱの収集も行う。 柴田慶信会長 伝統工芸士である慶信氏の探求心と情熱が今、我々が美しい曲げわっぱを手に取ることができる礎となっている。まことの曲げわっぱ名人だ。会社の名前は働く職人さんたちの誇りとなっている。 二代目柴田昌正代表は1988年に父に弟子入り。現在の生活に寄り添う「マゲワ」シリーズの展開、2018年に大館に曲げわっぱファンの集える場所にしたいと「わっぱビルヂング」をオープンさせた。大館曲げわっぱ協同組合理事長。 わっぱビルヂング わっぱビルヂング店舗 現在14人の職人さんを擁し、技術の伝承、国内外で曲げわっぱの紹介を行っている。最近は、職人志望の女性もいることから、工房を女性も働きやすくし、現代の職人さんにあわせた技の指導方法も工夫され未来の伝統工芸士を育てる。また、より曲げわっぱに親しんでもらいたく製作体験教室も行っている。子供たちと秋田杉の植林活動も。 工房内 曲げわっぱ製作体験教室 2024年には新ブランド「源平」を立ち上げる。今まで使うことがなかった「白太(しらた)」と呼ばれる材木の外側の部分も利用し、漆を施した器である。貴重な木材を無駄なく利用できる革新と伝承のあらたな一歩となった。木の赤と白の部分を使用することから、源氏と平氏になぞり名づけられた。 赤太と白太(白太がより新しい年輪) 源平になる器(白太と赤太の混合材) 源平 また、昌正代表は海外にも多く行かれて曲げわっぱを紹介されている。パリでは、杉と山桜の組み合わせが珍しく、地元の日本料理店と協力し日本のお弁当を作った。ミラノでは学生たちが、木が曲がり、隙間なく組み立てられた曲げわっぱを見てその精密さに感心していた。 カリフォルニアソノマでは地元の船大工が訪れ曲げわっぱの技術を興味深く見ていった。かんな、のこぎりなど道具の使い方の違いも驚きがあった。 日本独特のご飯をつめ、おかずと一緒に楽しむ文化はないものの、曲げわっぱの美しさは認められ、多様な利用方法も見られた。 これからの「曲げわっぱ」 柴田昌正代表は東京神楽坂の店舗でワークショップを行うことをはじめ、新しい取り組みも多数行っている。「バターケース」(塗るのにちょうどよい温度に保たれる)「シャンパンクーラー」(氷をいれても表面に汗をかかず、温度が保たれる)等。国内外で数々の賞を受賞されている。そして、次は味噌を作るための曲げわっぱを製作されている。ご自身が伝統工芸士としてデザインし、研究し、製作し、継承する、曲げわっぱ大使である。 シャンパンクーラー バターケース 「わっぱビルヂング」で憧れの曲げわっぱを手にいれた。ほんものを使う心意気は背筋が伸びる思いだ。少し難しい手入れも酢を使うすし桶が黒ずまないことにヒントを得て、クエン酸とたわしで洗い完全に乾かすことで、日々の手入れも簡単にできるとうかがう。手入れも楽しい。10年使ったお弁当箱は木目浮き出てさらに美しく、希望すれば漆を塗ってさらに長く使うことができる。次世代に伝えたい、つなげたい、と昌正代表は話される。わたしの曲げわっぱお弁当生活が始まった。 世界で一つだけ! ≪取材協力≫有限会社 柴田慶信商店https://magewappa.com/本店/店舗/工房 〒017-0044 秋田県大館市御成町2-15-28 TEL/FAX 0186-42-6123 Mail: info@magewappa.com わっぱビルヂング店 〒017-0044 秋田県大館市御成町1-12-271F TEL: 0186-59-7123 FAX: 0186-59-7122 神楽坂店 〒162-0825 東京都新宿区神楽坂6-26-6 TEL: 03-6265-0047 日本橋三越本店 〒163-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1 本館5階 クリエーターズテーブル TEL: 03-3274-8533 阪急うめだ本店 〒530-8350 大阪府大阪市北区角田町8-7 TEL: 06-6361-1381(代表) 岩田屋本店 〒810-8680 福岡県福岡市中央区天神2-5-35 岩田屋本店新館6階 リビング・和洋食器 TEL: 092-721-1111(代表) 神楽坂店 神楽坂店でのワークショップ