自然美と生命の魅力に溢れた北海道・知床 (知床パート2 動画編)

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 北海道東部の知床半島は、半島中央にそびえる羅臼(らうす)岳をはじめとする1,200〜1,600メートルの山々:知床連山が続いており、その成り立ちから奇岩や断崖など、多様な景観を観ることができる。半島の北部のほぼ3分の2の地域は知床国立公園に指定されており、2005年には世界遺産にも指定されている。半島は70キロほどの長さと幅25キロほどの広さで、その険しさから、知床岳を中心とする北部3分の1は陸地からのアクセスは困難を極める。冬は流氷に囲まれ、その流氷が豊富な食物連鎖をもたらしている。春になって溶ける流氷からはプランクトンが大増殖するからだ。そのプランクトンを求めて大量の魚が集まり、さらにアザラシやトド、オジロワシなどの鳥類、地上ではヒグマやエゾカモシカなどが繁殖する。そのため、知床は独特の景観に加えて、様々な動植物に溢れている。人類はというと、集落は北西のウトロと南東の羅臼に別れ、気候も大きく異なり、人口1,200人ほどのウトロ側では晴れる日が多いせいか、農業と観光業が中心で、人口4,000人あまりの羅臼側はというと雨や雪、霧が多く漁業が中心となっている。
 北海道でも観光スポットが多いと言われる道東。最寄りの女満別(めまんべつ)空港から、あるいは阿寒湖や摩周湖、釧路湿原などの観光も兼ねて、釧路空港からもアクセスが可能だ。年間100万人〜130万人の観光客が北海道内外から訪れると言われる知床。他では見られない多くの自然。この豊かな自然を守るためには様々な課題、動物と人間との共存や動物の過繁殖などがあり、地元自治体や「知床財団」などいろいろな取り組みを行なっている。
 6月のある日、撮影機材を抱えて梅雨のない爽やかな北海道へ向かった。

ウトロの美しい海

 今回は釧路空港から北海道へ入った。釧路湿原などを横目に車でひたすら北東へ向かう。斜里町を過ぎると全長18キロの「天に続く道」と言われる直線道路を通過する。なるほど北海道らしい雄大さである。間もなく道は海岸線へと続く。30分ほど走った海辺の街がウトロである。知床の観光拠点であり温泉地でもある。さらに国道334号線を少し北東へ向かうと美しい海岸に出た。思わずカメラを構え、しばし撮影。夕方の太陽の光が眩しい。そこを2羽の海鳥が横切っていく。あらためて自然の美しさを感じた一瞬だった。​

知床のウトロの海:動画 https://youtu.be/6x_Y98p1Cf4

オシンコシンの滝

 ウトロに宿泊した翌日、早朝から出発。日本の中でも日の出が早い北海道。さらに北海道でも最も日の出が早い知床は、この時期4時前には明るくなっている。ここは国道の横に駐車場があり、そのすぐ横に滝を観ることができる。「日本の滝百選」にも選ばれ、「双美の滝」とも呼ばれる通り、落差50メートルを大きく2つに別れて流れる水の流れは豪快である。滝壺の近くまで行くことができ、水飛沫を感じながらの観瀑となった。

オシンコシンの滝:動画 https://youtu.be/b41GZzsCjSc

赤イ川

 国道334号線から知床五湖へ向かう道道93号知床公園線へ入る。羅臼岳を背景に左右に曲がりくねる道を進む。時々見え隠れする道沿いの川が美しい。道端の駐車場へ車を停めて、カメラを構える。透明な水面が太陽の光を受けて輝いている。羅臼岳からオホーツク海へ流れ込む短い川ではあるが、この地の自然の豊かさを感じる。

赤イ川:動画 https://youtu.be/1c4-UPV72d8

カムイワッカ湯の滝と野生のヒグマ

 更に道を進んで、知床五湖への道とカムイワッカ湯の滝へと向かう三叉路へ。まずは早い時間のうちにカムイワッカ湯の滝へ行きその後、知床五湖へ向かうことにする。ここからは砂利道となる。小石が車体に当たる音を聴きながらおよそ11キロの道を進んだ。左側は崖、右側は法面(のりめん=斜面)といったスリリングなワインディングロードが続く。20分ほどでカムイワッカ湯の滝に到着。車10台ほどが停まることができる駐車場に車を停め、カメラを手に外へ出ると、駐車場の横の法面に1頭の野生のヒグマがいた。驚いた。身動きが取れずに見つめると、ヒグマはマイペースで草などを頬張っている。時々こちらに視線を送るが、向かってくる様子もないので、撮影させていただいた。ヒグマはその後も法面を登って行くので、目的のカムイワッカ湯の滝をうわの空で撮影することに。この滝はその名の通り温水が流れる滝とのことで、10分ほど歩いて上流まで行けるそうだが、橋の上から撮影して早々に引き上げた。

野生のヒグマ:動画 https://youtu.be/rRP0HG_k0tg

カムイワッカ湯の滝:動画 https://youtu.be/9dwqI3_mx0w

知床連山

 再び砂利道を南下する。知床五湖の分岐近くの広場でドローンを飛ばしてみた。上空から観る知床連山は、まさに雄大で誇らしい。羅臼岳の向こう側には、活火山の硫黄山(いおうざん)も観ることができるが、羅臼岳の勇壮さには敵(かな)わない。

知床連山:動画 https://youtu.be/ss_1MaDQNtk

知床五湖

知床五湖フィールドハウス(右)

レクチャールーム

 まずは五湖。一番小さい湖なので対岸がすぐそこに感じられるが、その向こうはまさに原生林。奥深い密林の向こうに連山を望むことができる。五湖を巡るコースはほぼ知床連山を背景に眺められようにコースが取られているので、どの湖も絶景となる。

知床五湖の五湖:動画 https://youtu.be/IYE_ao3GhY4

 大ループのコースは、最後の一湖から先の高架木道の800メートルを除くと、約2.2キロの距離を3時間ほどかけて歩く。ところどころガイドが絶妙のタイミングで、植物の話、自然の話やヒグマの話をしてくれるので飽きることはない。それぞれの湖の展望地では、5分ほどの時間をとってくれる。ガイドは歩きながらも少し大きめの声で解説や話を途切れさせない。多分ヒグマに存在を知らせる意味もあるのだろう。

 続いて縦に長い方向で眺める四湖は奥行きが深く、その先に羅臼岳を望むため、より神秘的な印象を与えてくれる。水面に映る山々も美しい。

知床五湖の四湖:動画 https://youtu.be/XaZS0z_u0SM

三湖は2番目に大きい湖で、横長に観るため対岸が広く背景の連山がとても似合っている。

知床五湖の三湖:動画 https://youtu.be/IhtjW4EuJ2w

 二湖にたどり着く前に、先頭を行くガイドが大きな声を出した。「ヒグマの糞です。こんなに大きくて数が多いのは見たことがないな」見ると、水芭蕉(みずばしょう)を好むヒグマの緑褐色の大きな糞が道の中央3、4カ所に落ちていた。一瞬近くにヒグマが?と思ったが、それはないというので一安心。​

ヒグマの糞

ガイドツアーの参加者

 二湖は一番大きい湖で横幅も広く奥行きも深い。ここで少し風が出てきたようだ。水面にさざ波が現れ、山々が揺れる。

知床五湖の二湖:動画 https://youtu.be/9Wx8hGn9UYI

 さて最後に一湖となる。ここから観る山々も美しいが、水面に映る山々はすでに形がない。

知床五湖の一湖:動画 https://youtu.be/-WRs97_109I

 ここで残り800メートルのフィールドハウスへ戻る高架木道へ入る。どの湖も美しく、自然の神秘さを感じられたツアーであった。長い間守られてきた自然は貴重なものである。何も持ち込まない。何も持ち帰らない。そして我々は、ヒグマの生息地にお邪魔するのだ、という考え方を大事にすることである、と教わった。

知床連山と高架木道

知床峠

 知床五湖を後にし、国道334号線を南東方面へ向かう。峠へ向かう道路は次第に傾斜がきつくなり、カーブも多くなる。徐々に視界が広がると、大きな駐車場が現れた。「知床峠展望台」である。北東には羅臼岳が目の前にそびえる。その姿はこれまで見てきた連山などとは違い、山そのもの。周囲を見渡すと北西にオホーツク海、南東に根室湾、そして根室湾には国後島が浮かんでいるる。

知床峠から羅臼岳を望む:動画 https://youtu.be/jctyFmP6CeU

知床峠から国後島を望む:動画 https://youtu.be/9Ym3ltzpvJ8

羅臼国後展望塔

 峠を南東方向に下って行く。15分ほどで、羅臼町の市街に入った。北海道の港町らしく閑散としており、海辺の幹線道路には食堂やお土産物店などが並ぶ。人々は長い歴史の中でどのような生活をしてきているのだろうか、興味が湧く。北海道東部の市町村はそれぞれの特色が強く、平成になってから全国で起こった市町村合併の流れの際、この地でも隣接する町と合併が協議されたが、実現はされなかったようだ。ウトロと羅臼もわずか20数キロの距離であるが、標高738メートルの知床峠が大きな隔たりとなっている。しかしそこに存在する羅臼岳は2つの町を見下ろし、また海に浮かぶ国後島をも見つめている。羅臼町の中心部から車でわずか5分ほどの丘に「羅臼国後展望塔」がある。海抜167メートルの展望塔からは羅臼町の港や、すぐそこに国後島、そして左手には羅臼岳を観ることができる。ここから観る羅臼岳はこれまで観てきた中でもっとも高く、偉大な姿をしていた。

羅臼国後展望塔から羅臼港・羅臼岳を望む:動画 https://youtu.be/b7h7Yz210UY

撮影・執筆/松本 新:SHARATA 株式会社アドワイヅ http://www.sharata.info/
《SHARATAでは、日本の絶景を4K映像で紹介しています。たくさんの方々に多くの絶景をお楽しみいただきたいと考えています。》

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